藤澤重樹先生(藤澤皮膚科)

医療法人社団 アップル会 藤澤皮膚科
http://www10.ocn.ne.jp/~fujisawa/
東京都練馬区東大泉1−37−14 2F
TEL:03-3925-8947  


著書



アトピー性皮膚炎にステロイド外用剤の長期連用、本当に大丈夫、安全なのか。(あとっぷ66号2005.09)

『アトピー性皮膚炎治療のため、ステロイドを外用薬として使用した場合には、リバウンドが生じることはほとんど考えられない』という意見がある。

この意見のエビデンスはない。
アトピー性皮膚炎にステロイド外用剤を長期連用後、中止してもリバウンドが起こらないという研究や報告、実際に観察された症例報告をみつけることはできない。

逆に、ステロイド外用剤の副作用を証明する研究、症例報告は無数存在する。この事実こそ、ステロイド外用剤長期連用の副作用の存在を証明するEBMである。

わが国のアトピー性皮膚炎治療ガイドライン、1993年に日本アレルギー学会によりアレルギー疾患治療ガイドラインの一部として発表された。

その後、厚生省(厚労省)の研究班(1999年、2000年、2001年、2002年)、東京都(1999年、2004年)[3][45]、そして日本皮膚科学会版(1999年試案、2000年、2003年、2004年)が発表されている。

日本アレルギー学会版、東京都版と日本皮膚科学会版ガイドラインの内容には、大きな違いが認められる。日本皮膚科学会版は大学教授が中心となり作成されたものであり、アトピー性皮膚炎の臨床の第一線の皮膚科医の意見が反映されているとは言いがたい[1][37]。

日本アレルギー学会版と東京都版がアトピー性皮膚炎の治療経過中に起こる多種多様な臨床症状への対処法が具体的に詳述されているのに比し、日本皮膚科学会版はステロイド外用剤を中心とする薬物療法が特に詳しく解説されているにもかかわらず、その他の記述は簡略化され、具体的記述に欠け、皮膚科医の判断による対応が求められている。

日本アレルギー学会版ならびに東京都版と日本皮膚科学会版とのガイドラインの間の最も重要な内容の違いは、前2者のガイドラインがステロイドの長期使用に際して全身性副作用が起こりうることを認めて(東京都版では薬物抵抗性、依存性についても記載[3][45])、広義の環境対策を重視している。

日本皮膚科学会のガイドラインではそれらを認めず、ステロイド外用に対する警告がまったく記述されていない。

1999年に、厚生省研究班のまとめたアトピー性皮膚炎の治療指針では、「ステロイド慎重使用を」という指針をまとめ、原因の除去、皮膚ケアが前面に打ち出されている[68]。

ステロイド治療は安全であると唱える日本皮膚科学会版ガイドラインに忠実に準拠した治療を行っていると、原因とされる要因に配慮するという予防的措置が疎かになりやすくなる。

未熟な皮膚科医が安易に使用しないように、ステロイド外用剤の使用の記述については、もう少し慎重な姿勢が必要では」と厚生省研究班のガイドライン作成に関わったあおきクリニック・かゆみ研究所(大阪市天王寺区)の所長青木敏之氏(当時大阪府立羽曳野病院皮膚科部長)は日本皮膚科学会のガイドラインについて指摘する[2]。

また、「日本皮膚科学会版はステロイドでうまくいかないステロイド依存性皮膚症などの難治例への対応について、具体的な内容が示されていない。

ステロイドでは治らない患者の存在に対し、医師がもっと目を向ける姿勢を示さないと、本当の信頼は得られないのでは」と語る[2][30][37]。
正鵠を得た意見である。

なお、米国アトピー性皮膚炎ガイドラインの作成委員会のメンバーは、製薬会社からのすべての支援の公開を要求されていて、ガイドラインの内容を第三者が批判的に検討できるように配慮されている。

最近、アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎などのアレルギー疾患に局所のステロイド剤を使うからアトピー性皮膚炎が増えているのだという論文が発表された[4]。
その要旨を紹介する。

Prevalence of atopic diseases and the use of topical corticosteroids. Is there any connection?
Pampura AN. Med Hypotheses. 2005;64(3):575-8
Department of Allergology and Clinical Immunology, Moscow Institute of Pediatrics and Child Surgery of the Ministry of Public Health, Taldomskaya Street 2, 125412 Moscow, Russian Federation.

The prevalence of atopic diseases (atopic dermatitis, bronchial asthma,
allergic rhinitis) has considerably increased for the last 40 years.
This tendency has coincided with the beginning of the epoch of the use of the topical corticosteroids, which have a potent immunomodulation action.
This fact itself as well as a number of research results has allowed to formulate the following hypothesis: the use of topical corticosteroids in children of early age contributes to the increase of prevalence of atopic diseases in the developed countries.

The offered hypothesis can explain lower prevalence of atopic diseases in rural areas and in children from families with the anthroposophic life style. In other side this hypothesis also capable to give explanation of increased level of atopic diseases among people with high socioeconomic level and in children from 1 child families.

It is of a note that corticosteroids use in developing countries is limited due to economic reasons and active use of complementary medicine. If the proposed hypothesis is correct, a revision of the therapeutic approaches is necessary concerning the attitude towards application of topical corticosteroids in children suffering from various forms of eczema. The direct proof of this hypothesis can be found during prospective studies.

(『』内が訳文)

『アトピー性疾患の罹患率と局所のコルチコステロイド剤使用。相関性があるか?

この40年の間で、アトピー性疾患(アトピー性皮膚炎、気管支喘息、アレルギー性鼻炎)の罹患率がかなり増加している。
この傾向は、強い免疫調整力を有する局所へのステロイド使用を始めた時代と一致している。

この事実は、多くの調査結果と同様に以下の仮説を示している。

:小児の年少期のステロイドの局所使用は、先進諸国でアトピー性疾患の有病率の増加に寄与している。
提示された仮説は、農村地帯や人智生活様式◆の家族の小児におけるより低いアトピー性疾患の罹患率を説明することができる。

他方、またこの仮説は、高い社会経済水準の人々の間や、一人っ子家族で小児のアトピー性疾患のレベルの増加を説明をすることもできる。発展途上国において経済的理由や活発な代替医療が用いられることにより、コルチコステロイド使用が制限されることは重要なことである。

提案された仮説が正しいとすれば、さまざまな形態の湿疹で苦しんでいる小児のステロイド外用剤の適用に対しての治療的アプローチの見直しが必要である。この仮説の直接の証明は、前向き研究◆◆で見つかる。』

◆人智生活様式(Anthroposophic Lifestyle)(2002.12):これは自然発酵野菜を重んじ、抗菌剤、抗炎症剤およびワクチンをできるだけ制限する生活様式。

◆◆すべての事象がすでに起こってしまった過去のことを解析するのがケースコントロール研究(Retrospective Study)、後ろ向きの研究ともいう。
ある危険因子にさらされた者とそうでない者が将来どのような病気に罹患するか、あるいはどのような病態になるのかを研究するのが、コホート研究(現在から未来への向き、つまり前向きに行われる解析、Prospective Study)。前向き研究ともいう。

ステロイド外用剤の副作用をあげる。
ステロイド外用剤の長期連用した際の副作用。

以前より指摘されているものは、

(1)毛細血管拡張(酒さ)、酒さ様皮膚炎、ステロイドざ瘡、皮膚萎縮、線状皮膚萎縮、ステロイド紫斑、ステロイド緑内障、多毛・色素沈着[3][7][8][12][15][45][26][27][29][31][39][41][42][44][50][55][56][57][60][61][62][63]。

(2)毛嚢炎・せつ・癰・カンジダ・白癬などの皮膚感染症の誘発[3][7][8][12][15][45][26][27][29][31][50][55][56][60]。

さらに、ステロイド剤が長期間、連用されたアトピー性皮膚炎の患者さんには上記に含まれない次のような副作用が問題となります。

(3)抗利尿ホルモン、レニン、アルドステロンが異常高値を呈す[5][47][48]。

(4)些細な刺激(異物との接触、発汗、運動、不眠や過労、季節の変化)により悪化しやすくなる易刺激性の皮膚状態[12][3][45][26][29]。

(5)ステロイド剤の減弱効果(tachyphilaxis、効かなくなっていくこと)[3][10][11][23][26][27][29][37][42]。

(6)減量・中止に伴う「リバウンド現象」としての顔面頸部病変の発赤腫脹、浸潤化・中毒性紅斑・汎発化などの急性悪化[3][7][12][14][15][16][18][45][19][20][21][22][23][24][25][26][27][28][29][31][32][33][34][35][36][37][38][39][40][41][42][43][44][47][61][64][65][66]。

(7)特に長期大量使用による副腎皮質機能低下[3][6][9][45][26][29][34][36][42][46][47][49][51][52][53][54][55][56][58][59]。

(8)長期使用によるIgE抗体価の上昇とさらなる重症化[3][12][13][17][45][21][22][23][24][25][26][27][29][32][34][40][42][66][67]。

ステロイドを長期間使用した場合、本来のアトピーが治らないばかりか、それ以上にステロイド依存性皮膚症の苦しみを負うことになる[3][12][15][24][25][26][29][31][32][33][34][45][36][37][38][39][40][42][43][44][64][65]。

文献

[1]第30回日本皮膚アレルギー学会会頭講演 アトピー性皮膚炎のステロイド治療をめぐる諸問題 青木敏之 あおきクリニック院長・かゆみ研究所所長 マルホ皮膚科セミナー
SEMINA DERMATOLOGIE 
放送内容集 No.152, p26-28 2001年5月30日

[2]トレンドビュー 追跡 アトピー性皮膚炎に二つの指針「学会版」作成の背景と狙い
日経メディカル p.31, 9, 2000

[3]池澤善郎 アレルギー疾患対策ハンドブック 第3章 アトピー性皮膚炎、横浜市大医学部皮膚科教授 東京都衛生局生活環境部環境保健課、1999年11月発行

[4]Pampura AN. Prevalence of atopic diseases and the use of topical corticosteroids. Is there any connection? Med Hypotheses. 2005;64(3):575-8.

[5]佐藤健二、他:成人型アトピー性皮膚炎患者における高ナトリウム血症下での抗利尿ホルモン異常高値,
皮膚臨床44(1);1547〜1551, 2002

[6]島雄周平ほか外用コルチコステロイド経皮吸収による副腎皮質機能の検 -17α-Desoxymethasone軟膏の場合-  
皮膚臨床 15(5) 303-310, 1973

[7]ALBERT M. KLIGMAN STEROID ADDICTION「ステロイド嗜癖」International Journal of Dermatology 
1978, 1918(1)23-31

[8]小嶋理一, 他, ステロイド軟膏の副作用,
皮膚臨床 17(4);251-257, 1975

[9]宮地良樹, 内藤公一, 少量のステロイド外用で著明な副腎皮質抑制をきたした1例 
臨床皮膚科 34(9), 889-892, 1980

[10]Anthony du Vivier, MB, MRCP, Richard B. Stoughton, MD Tachyphylaxis to the Action of Topically Applied Corticosteroids,
Arch Dermatol/Vol 111 , May 1975 pp.581-583

[11]G. SINCH, M.D., AND P. K. SINCH, M.D. Tachyphylaxis to Topical Steroid Measured by Histamine-induced Wheal Suppression INTERNATIONAL JOURNAL OF DERMATOLOCY June 1986 Vol. 25 pp.324-326.

[12]南宏典、佐藤健二重症成人型アトピー性皮膚炎患者のステロイド外用剤離脱 :皮膚、38巻4号:440ー447、1996
[13]Wu CY et al. Glucocorticoid increases the synthesis of immunoglobulin E by interkeukin 4-stimulated human lymphocytes. J Clin Invest 1991, 87, 870,

[14]榎本充邦、他 ステロイド外用剤によるSteroid Withdrawal Syndrome様症状について
香粧会誌 Vol.15 No.117-24, 1991

[15]佐藤健二、南宏典、前田知子、田口博康アトピー皮膚炎とステロイド依存性皮膚症 
「正しい治療と薬の情報」(1994 Vol.9 No.4)

[16]菅原信 アトピー性皮膚炎と外用ステロイドリバウンド SEMINRIA DERMATOLOIE
マルホ皮膚科セミナー 放送内容集No.121 11-13, 1996

[17]木俣肇 アトピー性皮膚炎のリバウンドにおけるIgE産生亢進と好酸球増加、
医薬ジャーナル33:3057-3070, 1997

[18]榎本充邦 ステロイド外用剤によるsteroid withdrawal syndrome様症状、治療、79:2632-2636, 1997

[19]木俣肇 アトピー性皮膚炎のリバウンド:γ−グロブリンと抗菌療法の効果 脱ステロイドについて 
臨床医薬 14(14), 2571-2584, 1998

[20]玉置昭治 脱ステロイド療法 皮膚科の臨床 Vol.40 No.6 特集38号 1998年5月
アトピー性皮膚炎のトピックス−病態から治療まで− 臨床から基礎へ ?治療 2.各論 特殊療法
淀川キリスト教病院皮膚科部長

[21]井川健、宮崎安洋、佐藤貴浩、横関博雄、片山一郎、西岡清、副腎皮質ステロイドによる遅延型アレルギー増強の機序 臨床免疫、30(9):1253-1257, 1998

[22]Kimata H., Selective enhancement of production of IgE, IgG4, and Th2-cell cytokine during the rebound phenomenon in atopic dermatitis and prevention by suplatast tosilate., Ann Allergy Asthma Immunol. 1999
Mar;82(3):293-5

[23]佐藤健二 「成人型アトピー性皮膚炎」の脱ステロイド、脱保湿剤の名古屋での経験  名古屋大学市立大学医学部皮膚科 皮膚、第41巻、増刊21号、1999年12月、108-111

[24]木俣肇 アトピー性皮膚炎に対するヒスタグロビンの効果 ステロイドを使わないスキンケアと、経口抗アレルギー薬、抗ヒスタミン剤との併用療法 新薬と臨床48(9), 1174-1184, 1999

[25]木俣肇 アトピー性皮膚炎のステロイドフリーのアレルギー科的治療による改善と治癒 Pharma Medica Vol.17 No.10. 167-176 ,1999

[26]玉置昭治 ステロイド外用剤の副作用 皮膚:第41巻増刊21号26-30,1999

[27]片山一朗 ステロイドの皮膚への影響 皮膚:第41巻増刊21号22-25,1999

[28]渡辺秀晃, 池田祐輔, 飯島正文 3.外用薬によるwithdrawal syndrome,
Consensus Update Atopic dermatitis アトピー性皮膚炎メディカルビュー社2000年4月

[29]深谷元継 「アトピー性皮膚炎とステロイド離脱」医歯薬出版 2000年06月20日

[30]青木敏之 
・アトピー性皮膚炎とステロイド治療をめぐる諸問題 日本皮膚アレルギー学会、2000年7月、日皮会中部支部
・情報をめぐって医師と患者とメディアの対話−ス剤治療で医
者不信、2000年9月

[31]安保徹 体調と免疫系のつながり アトピー性皮膚炎患者のためのステロイド離脱 治療、 82, 6, 1794-1803, 2000

[32]安保 徹 招請講演 胸腺外分化T細胞の自己反応性は有害か有益か 日本皮膚科学会誌 第110巻 第12号 平成12年臨時増刊号 第99回 日本皮膚科学会総会・学術大会
号 110(12), 1805-1806, 2000 

[33]今山修平 巻頭言:アトピー性皮膚炎が治るということ  アレルギーの臨床
20:511, 2000

[34]Fukaya, M. MD., Improvement of atopic dermatitis after discontinuation
of topical corticosteroids treatment. ARCH DERMATOL VOL136,MAY 679-670 2000

[35]木俣肇, 全身反応としてのアトピー性皮膚炎のリバウンド 炎症性メディエーターの増加と好酸球におけるFcεR?(CD23), FcεR?の発現 新薬と臨床 49(2), 152-168, 2000

[36]Kawakami T, et al., Safe and effective treatment of refractory facial lesions in atopic dermatitis using topical tacrolimus following corticosteroid discontinuation., Dermatology. 2001;203(1):32-7

[37]深谷元継 アトピ性皮膚炎における脱ステロイド批判への反論 日本医事新報 No.4070 p.53-55(2002年4月27日)

[38]松田三千雄 漢方薬とローラー針での経絡刺激によるアトピー性皮膚炎の顔面部のリバウンド治療, No.371, 4-9, 2002

[39]藤原二郎、他、 アトピー性皮膚炎-ステロイドからの離脱と石膏の効果、日本東洋医学会雑誌, 52, 507-514, 2002

[40]朝倉一善 奇跡のアトピー自然療法 専門医のすすめる脱ステロイドとリバウンドからの脱却  株式会社実業之日本社
2002年12月28日発行

[41]小栗剛・本田光芳 2.ステロイド外用薬、Dermatology Practice 皮膚科診療プラクティス12 スペシャリストとしての外用薬の使い方2002年5月31日文光堂

[42]浜六郎 薬のチェックは命のチェック特集ステロイド2003.1.20 使用期間が長期になるにしたがって当初考えてもみなかった外用局所での副作用が高頻度にみられるようになった。

[43]幸野健, 谷口彰冶, 青木敏之 アトピー性皮膚炎におけるステロイド外用剤のEBM
医薬の門 43:526-530, 2003

[44]Marvin J. Papaport, MD Mark Lebwohl, MD Corticosteroid Addiction and Withdrawal in the Atopic: The Red Burning Skin Syndrome Marvin J. Papaport,
MD Mark Lebwohl, MD Clinics in Dermatology 21, 201-214, 2003

[45]池澤善郎 アレルギー疾患対策ガイドドブック2004 第3章アトピー性皮膚炎、横浜市大医学部皮膚科教授 東京都衛生局生活環境部環境保健課、平成11年11月発行

[46]Agnese Kelly, et al., Iatrogenic Cushing's Sndrome, British Medical Journal, 14 October, p.114, 1972

[47]島津恒敏:皮膚, 41(増21):86-96, 1999

[48]谷□裕子ほか:アレルギー, 48:33-39, 1999

[49]B.J. Bermeer and G.F.F. Heremans, A Case of Growth Retardation and Cushing's Syndrome Due to Exessive Application of Betamethasone-17-Valerate Ointment, Dermatologica 149; 299-304, 1974

[50]小嶋理一 ステロイド軟膏による皮膚病変 -最近2年間に診た約60例を中心に-,
皮膚臨床21(6); 409-413, 1979

[51]R. C. D. Staughton, P.J.August, Cushing's Syndrome and Pituitary-adrenal Suppression due to Clobetasol Propionate,  British Medical Journal, 24,
May, 419-421, 1975

[52]阿曽三樹ほか 外用コルチコステロイド経皮吸収による副腎皮質抑制の検 -0.05%Clobetasol 17-Propionate Ointement単純塗布の場合- 西日皮膚 37(4) 553-564, 1975

[53]Philip May, MD; et al. Cushing Syndrome From Percutaneous Absorption of Triamcinolone Cream, Arch Intern Med 136, May 1976
[54]武田克之ほか 副腎皮質ホルモン外用剤の全身におよぼす影響 -とくに副腎機能抑制を中心に  醫学のあゆみ 101(12), 817-828, 1977

[55]幸田弘、他 ステロイド外用剤による副作用、西日皮膚 40(2), 177-187, 1978

[56]島尾周平 皮膚科領域におけるステロイド療法とその問題点 -とくに副作用を中心として-  
西日皮膚 40(1), 5-24, 1978

[57]武田克之 副腎皮質ホルモン外用薬の局所に及ぼす影響 -とくに各種外用薬による皮膚萎縮を中心に 、他、医学のあゆみ 116(7) 643-649, 1981

[58]阿曽三樹ほか 外用コルチコステロイド経皮吸収による副腎皮質機能抑制の検 -0.05%Diflorasone Diacetate軟膏単純塗布の場合-
西日皮膚 Vol. 43増刊号 1158-1163, 1981

[59]Lawrence J. et al. Iatrogenic hyperadrenocortism during topical steroid therapy: Assessment of systemic effects by metaboloic criteria, Am Acad Dermatol 1982, 6(6), 1054-1060

[60]Gianpiero Stroppoloni, MD, et al., Potential Hazards of Topical Steroid Therapy, Am J Dis Child, Vol 137, Nov 1130-1131, 1983

[61]本田光芳 身近な皮膚病変-とらえ方と治療のコツ- Q&A ステロイドを外用しても治らないときには何を考えますか? 治療 Vol. 73, No.10 129-133 1991

[62]Korting HC, Kerscher MJ, Schafer-Korting M. Topical glucocorticoids with improved benefit/risk ratio: do they exist? Am Acad Dermatol. 1992
Jul;27(1):87-92. Related Articles, Links

[63]矢島純 本田光芳 (3)酒さ様皮膚炎 日獨医報 38(1), 78-82, 1993

[64]玉置昭治 他 成人型アトピー性皮膚炎の脱ステロイド療法 日皮アレルギーVol.1 No.1 230-234 1993

[65]片山一朗外4名 成人アトピー性皮膚炎の難治性顔面皮膚炎に対する脱ステロイド外用療法の評価1994年(平成6年) 脱ステロイド外用療法の評価について。

[66]井川健、宮崎安洋、佐藤貴浩、横関博雄、片山一朗、西岡清 副腎皮質ステロイドによる遅延型アレルギー増強の機序 、臨床免疫、30(9):1253-1257, 1998

[67]木俣肇 IgE産生の調節機構、 現代医療別冊 Vol 30. No.3 1998
23(733)-30(740)

[68]「ステロイド慎重使用を」厚生省研究班、初めてアトピー治療で指針をまとめた。原因の除去、皮膚ケアを前面に打ち出している(朝日新聞【大阪】1999年03月11日)

リウマチ・アレルギー情報センターから(あとっぷ69号2006.03)

リウマチ・アレルギー情報センターから、厚生労働省科学研究情報が発表されています。

http://www.allergy.go.jp/Research/Shouroku_01/16_mori_01.html

気管支喘息の難治化機序の解明と予防・治療法の開発に関する研究に、以下の文章があります。

『 気管支喘息の難治化機序の解明と予防・治療法の開発に関する研究

近年の薬物療法の進歩にも拘わらず、なお全身的ステロイド薬の継続を余儀なくされる難治性喘息患者群は、成人喘息診療に残された難問である。

小児喘息における難治群は、授業欠席、社会生活不適応、心身両面の成長障害など多彩な問題を抱えている。喘息難治化の機序解明と、有効な治療・予防法の開発は、喘息診療分野の最大の課題といえる。

平成12〜14年度の厚生科学研究「気管支喘息の難治化の病態機序の解明と難治化の予防・治療法開発に関する研究」(主任研究者 森 晶夫)では、厚生省免疫異常ネットワーク研究協力施設の参加も得て、難治性喘息の今日的診断基準を確立し、現在の我が国における実態、病態、治療内容を把握した。

難治性喘息の少なくとも3分の1以上が喘息発症1〜2年以内にステロイド依存に陥っていることから、発症時から通常の喘息とは異なっていることが明らかになった。

高用量のステロイド使用にもかかわらず、高度の炎症反応が持続しているとの知見は、ステロイドに良好に反応する通常の喘息との本質的差異を示唆する。

メカニズム研究の面からは、高用量ステロイド投与下でも持続する炎症反応を確認し、好酸球過剰活性化、気道・u档潟cfリング、T細胞を中心とした細胞性免疫の異常を難治化関連要因として指摘してきた。

さらに、炎症細胞(T細胞、好酸球、気道上皮細胞)における、サイトカイン受容体、シグナル伝達分子、サイトカイン遺伝子転写機構などの異常を分子的に詳細に解析するとともに、in vitroの実験と平行する形でマウス喘息モデルを用いて検証し、in vivoでのステロイド低応答性、気道過敏性、リモデリングに関与する責任分子の特定をめざす。

臨床面では、難治性喘息の大部分が非アトピー型であるとの調査結果を踏まえて、IgE非依存性の”T細胞アレルゲン”に関する診断法、評価法の確立をめざす。

難治化要因の解明は、予防、治療への突破口と期待される。また、難治化関連遺伝子多型を見い出し、診断法として確立し、早期発見、予防への応用をめざす。 』

この文章の『喘息』を『アトピー性皮膚炎』に変えてみました。
それが以下の文章です。

『 アトピー性皮膚炎の難治化機序の解明と予防・治療法の開発に関する研究

近年の薬物療法の進歩にも拘わらず、なお全身的ステロイド薬の継続を余儀なくされる難治性アトピー性皮膚炎患者群は、成人アトピー性皮膚炎診療に残された難問である。

小児アトピー性皮膚炎における難治群は、授業欠席、社会生活不適応、心身両面の成長障害など多彩な問題を抱えている。アトピー性皮膚炎難治化の機序解明と、有効な治療・予防法の開発は、アトピー性皮膚炎診療分野の最大の課題といえる。

平成12〜14年度の厚生科学研究「アトピー性皮膚炎の難治化の病態機序の解明と難治化の予防・治療法開発に関する研究」(主任研究者 森 晶夫)では、厚生省免疫異常ネットワーク研究協力施設の参加も得て、難治性アトピー性皮膚炎の今日的診断基準を確立し、現在の我が国における実態、病態、治療内容を把握した。

難治性アトピー性皮膚炎の少なくとも3分の1以上がアトピー性皮膚炎発症1〜2年以内にステロイド依存に陥っていることから、発症時から通常のアトピー性皮膚炎とは異なっていることが明らかになった。

高用量のステロイド使用にもかかわらず、高度の炎症反応が持続しているとの知見は、ステロイドに良好に反応する通常のアトピー性皮膚炎との本質的差異を示唆する。

メカニズム研究の面からは、高用量ステロイド投与下でも持続する炎症反応を確認し、好酸球過剰活性化、気道リモデリング、T細胞を中心とした細胞性免疫の異常を難治化関連要因として指摘してきた。

さらに、炎症細胞(T細胞、好酸球、気道上皮細胞)における、サイトカイン受容体、シグナル伝達分子、サイトカイン遺伝子転写機構などの異常を分子的に詳細に解析するとともに、in vitroの実験と平行する形でマウスアトピー性皮膚炎モデルを用いて検証し、in vivoでのステロイド低応答性、気道過敏性、リモデリングに関与する責任分子の特定をめざす。

臨床面では、難治性アトピー性皮膚炎の大部分が非アトピー型であるとの調査結果を踏まえて、IgE非依存性の”T細胞アレルゲン”に関する診断法、評価法の確立をめざす。

難治化要因の解明は、予防、治療への突破口と期待される。また、難治化関連遺伝子多型を見い出し、診断法として確立し、早期発見、予防への応用をめざす。 』

  • 『難治性喘息の少なくとも3分の1以上が喘息発症1〜2年以内にステロイド依存に陥っていることから、発症時から通常の喘息とは異なっていることが明らかになった。』と、
  • 『難治性アトピー性皮膚炎の少なくとも3分の1以上がアトピー性皮膚炎発症1〜2年以内にステロイド依存に陥っていることから、発症時から通常のアトピー性皮膚炎とは異なっていることが明らかになった。』、

共通点があるようにみえます。いかがでしょうか。

アトピー性皮膚炎と心の問題 −ことに不安について−(あとっぷ73号2006.11)

・始めに

専門医の診療を仰き、様々な努力をしても治りにくい疾患が少なからずあります。アトピー性皮膚炎(AD)もその一つです。

アレルギー性疾患の本家本元として、受け止められているADですが、その病態は多彩で、一様ではありません。

米国皮膚科学会は、
『アレルギーがAD発生に中心的役割をはたしている証拠は貧弱なもので、少数の患者で増悪要因でありうるという程度のものである。従って、日常的にアレルギー検査を行なうことや、治療として食事や環境を整えることには正当な理由をほとんど見いだし得ない(J Am Acad Dermatol 1995;33:1008-18)』
という見解を発表しています。

このように、アレルギー対策だけではADがコントロールできないことはよく知られています。

『毎日、布団、部屋の清掃を欠かさず、朝夕のシャワー、入浴、遊んで汚れるたびによく洗い、その都度保湿剤を丁寧に塗布』などの度を越えたスキンケアやアレルギー対策、効けばいいが必ずしもうまくいくとは限らない。

症状が改善しないと、患者さんの努力が足りないからだとなると、かえって心理的な負担となり、本末転倒。もとより、症状を一時的に改善させるだけの治療では、本質的な心の問題の解決には至らず、難治化し経過が遷延することもしばしばあります。

たとえば、ステロイド外用剤長期連用の副作用のエビデンスは無数あり、安全性を証明するものは皆無。最近では、アトピー性疾患の増加はステロイド剤使用が原因であり、いくつかの仮説を提示し、これらは前向き研究(Prospective Study)で証明できるとする報告があります。

そのなかで、小児ADの乳幼児期にステロイドを使い出した時代とADが増加した時が一致していることはパラドックス(矛盾、逆説)そのものであると指摘しています。

1952年以降、ステロイド外用剤が使われるようになったからといって、ADが減少し、問題が解決したかといえばそうでもない。そのようなことから、最近では、ADを心身症としてとらえて対応する考え方がクローズアップされています。

・ADと心の関係

皮膚は、中枢神経と直接的なつながりがあり、自律神経、免疫や内分泌との関わりも深い臓器であります。

たとえば、ストレスや不安などの強さと皮膚のバリア機能、アレルギー炎症反応の強さはよく相関します。カウンセリングや抗不安薬の応用などのストレスマネージメントが有用であることも、ADにおいて心の問題が大切であることを示唆しています。

してはいけないことはすべてやめ、やることはみんなやった。なのに、なかなか治らないという難治例で、何が悪さをしているかを追究していくと、不安そのものが原因であることがしばしばみられます。

不安が強迫観念をあおり、自己の治癒力の低下を招き、いつまでも悪化した状態が続く。結果として、不安はさらに増幅され、難治化したままということがあります。

「先生、ステロイドを止めてもう2年も経ちました。なのに全然よくならない、私どうしたらいいんですか」という36歳の女性がご主人様と2歳のご長男とともに来院されました。

パニック障害と思われるほどの強い不安と焦燥かられた表情で、「先生どうしたらいいんですか、私治らないんです、助けてください」と号泣。家に引きこもらないでご家族と一緒に散歩などしてなるべく外出するように、好きなことをしてリラックスする時間を持つように、人間関係も大切にして、何ごとにも感謝の気持ちを持ちなさいと説明しました。

処方した薬剤は、モクタール軟膏だけでした。2週間後、「先生治りました」と掻破痕も消え、すっかり見違えるようによくなり、全く別人のニコニコ顔で来院。不安を取り除くように気持ちを一新するだけで、短期間で改善した症例でした。

不安を払拭する具体的な方法として、

?スポーツ・趣味を楽しむ、
?リラックスタイムを作る、
?社会とのつながり、コミュニケーション、ネットワークを生かす
?ストレスを軽減する効果のある『ありがとう』という優しい言葉を大切にするなどがあります。

これらの提案で、不安が解消され、ADが改善する症例をしばしば経験します。iPodでモーツァルトなどの素敵な曲を聴きながら、野山をトレッキング、戸外を散歩してリラックスするだけで皮膚のバリア機能はアップし、アトピー性皮膚炎が改善します。

その理由として、

(1)不安が解消し、ストレスが軽減すれば認知能力が高まり、自己コントロール力が増し、その結果、不必要な掻破が減少し、皮疹が改善する。
(2)皮膚そのもののバリア機能が強化される。回復が早まる。
(3)安堵することにより、アレルギー炎症反応の強さが減少する。
(4)緊張が取れて、交感神経優位から副交感神経優位に移行し、リンパ球優位モードとなり、顆粒球が減少し、皮膚炎が軽減することなどが考えられます。

ADの患者さんには、もともと、汗をかくと必ず湿疹が悪化する、紫外線はアトピーに悪いといった歪んだ認知を持つ人が多い。

歪んだ認知の例として、『なにかやろうとする時に「〜すべき」、「〜すべきでない」と考えてしまう“すべき思考(should thinking)”』があります。

痒いからなにかを塗るべきだ、アトピーだからなにか塗らなければいけないと強く思い、そばにあるものを手当たり次第に塗ってしまい、保湿剤依存になって、さらに苦しむことなどは歪んだ認知の典型例です。

歪んだ認知があるから、不安やストレスが生じ、ADが悪化し、治らないという構図が指摘されていますが、もとはといえば不安があるから歪んだ認知が生じ、その結果、さらなる不安が生じるともいえます。

AD治療に、不安を解消することが大切である所以であります。ステロイド外用剤を用いないより安全な診療が求められるのは、不安を覚えてまで治療したくないという患者さん自身の自己防衛的な心情のなせるわざかもしれません。

ステロイドを中止して、患者さんがそれまでステロイドでマスクされていた本質的な心の問題と直面することができるようになることも脱ステロイドのメリットの一つです。

ADにとって、一番の強敵は不安というストレスであるかもしれません。今後、この分野での心身症としてのAD研究の進展が期待されます。


藤澤重樹先生の書籍



a:32886 t:1 y:3