玉置昭治先生(尼崎医療生協病院皮膚科)

▼平成20年4月14日からの勤務先です。

・過去の勤務先
宗教法人 在日本南プレスビテリアンミッション淀川キリスト教病院
附属クリニック皮膚科 元部長 
平成20年3月29日をもちまして定年退職。


出版本



メデイア

情報ライブ ミヤネ屋に出演

茶のしずく石鹸「悠香」についての解説で、出演されました。
2012-04-23 15

2012-04-23 15

2012-04-23 15

2008.02.24.玉置先生講演会

会報あとっぷへのご寄稿文

●会報あとっぷへのご寄稿文1

●会報あとっぷへのご寄稿文2
ご寄稿文1を読んだ後は是非、ご寄稿文2をお読み下さい。
会報あとっぷへのご寄稿文2の記事一覧

   Vol.51 医療問題とアトピー性皮膚炎
   Vol.52 「たましい」と「こころ」
   Vol.53 文藝作品に現れたアトピー
   Vol.54 アトピー性皮膚炎の原因 (2003.10)
   Vol.55 最近のステロイド事情
   Vol.56 アトピー性皮膚炎とストレス
   Vol.57 ステロイドを使う時
   Vol.58 アトピー性皮膚炎の原因・元気が出る患者学
   Vol.59 書くこと、書かれること
   Vol.60 脱ステロイド裁判について (2004.09)
   Vol.61 最近思うこと
   Vol.62 離脱皮膚炎とリバウンドとアトピーの悪化の関係
   Vol.63 患者の視点−功と罪―
   Vol.64 アトピー性皮膚炎:今と昔
   Vol.65 最近の治療風景
   Vol.66 診察風景2
   Vol.67 恨みツラミで物事は好転しない (2005.11)
   Vol.68 悪徳リフォームと密室医療
   Vol.69 恨みツラミで物事は好転しない2 
   特別ご寄稿文 ストレスと皮膚症状
   Vol.70  夫婦喧嘩は傷の治りを遅くする  
   Vol.71 健康情報とサプリメント
   Vol.72 渋谷
   Vol.73 心のアンバランスについて
   特別ご寄稿文 情報を整理するためにどういう視点が必要か
   Vol.74 占い・引きこもり・ニート・アトピー
   Vol.75 医療は未来を開く (2007.02)
   Vol.76 アトピー学校の卒業 (2007.04)
   Vol.76-2 アトピー性皮膚炎は皮膚の風邪
   Vol.77 脱ステロイド療法再考(2007.07)
   Vol.77-2 アトピー性皮膚炎の正しい理解に向けてーその1
   Vol.78 アトピー性皮膚炎の正しい理解に向けてーその2(2007.09)
   Vol.78-2 アレルギー学会に参加して(2007.09)
   Vol.79 アトピー性皮膚炎は治る。(2007.11)
   Vol.80 淀川キリスト教病院と近畿中央病院 (2007.12)
   Vol.81 良くなる人、良くならないで もがく人 (2008.02) 

●ドクトル玉置のコーナー
尼崎医療生協病院に赴任されてから、あとっぷホームページ用に頂いたご寄稿文です。



会報あとっぷへのご寄稿文1

これは、目次です。気になる項目をクリックすると本文に移動できます。

Vol.1 「あとっぷ」創刊によせて (1994.11)

脱ステロイドを行い出して4年、その効果を学会で発表して3年になります。
その間にこの治療姿勢がマスコミにも報道され、淀川キリスト教病院を受診するアトピー性皮膚炎の患者さんが増えてきました。 
数多く経験した脱ステロイドの経過からみて、この治療法は間違っていなかったと確信を得るようになりました。

しかし、全ての人がうまく治っているわけでは無く、また良くなっていても妊娠などを契機に悪くなる方もいます。入院治療が必要であった重症(93年12月末までに退院)の方にアンケート調査をし、その後の経過を解析して、今後の治療に役立てようと思います。
 
当院で治療を受けたアトピー性皮膚炎の患者さんが中心になって、経験交流や情報交換のための組織を作ると聞きました。
アトピー性皮膚炎の患者団体は除去食などを中心にして沢山あります。しかし、その多くは治療を指導する医師を中心として発足したものや、親の会であったり、温泉の宅配のように営利を目的とした団体です。  患者さん自身が中心になって、楽しく治してゆくのを目的とした会は、他に例をみないと思います。

私が患者会を組織しなかったのは「アトピー性皮膚炎は医師や薬が治すのでは無く、元々体に備わっている自然治癒力の御陰で治る」という考えとも相通じます。医師が中心になって組織したものでは、会の運営が医師中心になり、本当の意味で治療のための力に成りえないというふうに考えているからです。

だから、この運動に期待しています。

会を力強く進めていただき、アトピー性皮膚炎なんか吹き飛ばしてしまってほしいと思います。

学問的な援助はさせていただきます。

Vol.2 無題 (1995.01)

明けましておめでとうございます。お肌の調子はいかがですか。
冬期に良くなる人もいますが、空気が乾燥していますから肌も乾燥してきます。
暖房のある室内と寒い外気とのギャップで痒くなったり、忘年会・新年会など
アルコールの入る機会も多くなります。

また、受験生にとってはいよいよ最後の追い込みの時期になります。
その為、冬期には悪くなる方が多いようです。スキンケアに注意して、外気温の差により
悪化しないように体温調節が出来るような衣服にしましょう。忙しい時期ですが、睡眠時間を
充分確保しましょう。また、食べ過ぎ・飲み過ぎに注意しましょう。

昨年10月に1993年12月までに、脱ステロイドの為に入院して治療した患者さんに皮膚の状態を聞くアンケート調査を行いました。ステロイド使用中と比較して答えてもらいました。

全員で149名にアンケートを送りました。その結果は

非常に良い8名、
良い36名、
まあ良い41名
不変13名、
悪化2名、
休職・休学中4名、
ステロイド再使用中25名、
回答無20名

と6割近くはまあ良い以上の結果を得ました。

入院する程の重症例でも6割弱はステロイド使用中に比して、まあ良い以上の結果は脱ステロイドは間違っていないと確信しました。

93年の入院患者は93名でした。93年の15才以上のアトピー性皮膚炎の患者は約800名でしたから1/8が入院したことになります。この800人のアンケートを行いたいのですが、まだ出来ていません。

ステロイドの再使用中が25名います。使いだしたきっかけは妊娠、試験など、結婚の為やこれ以上仕事を休めない、日常生活に支障をきたした為などです。

しかし、半数の人はステロイド使用で落ち着いており、ほとんどの人は脱ステロイドに再チャレンジしたいと答えています。

Vol.3 また、地獄をみた (1995.3)

ゴーと下から突き上げてくる、波に乗ったような異常な揺れに目を覚ました。
隣の部屋に寝ている次男をともかく守ろうと、彼のベッドに飛び乗って身を伏せた。
その直後に壁がバラバラと体の上に崩れてきた。不気味な揺れが収まるとポッカリと開いた2階の屋根から出て屋根伝いに道路へ出た。次男も後に続いた。

家はペッチャンコになり、妻と長男の姿が見えない。
「政子!、淳!」と声をかけると
「ここよ、耳が切れている」
「ここに居る」と声が帰ってきた。

長男はベッドの上で2階の瓦礫に押さえつけられている。隣の御主人と息子さんの応援を得てそれらをどけにかかるが、ビクとも動かない。
「早く出して、息苦しくなって来た。」
遠くで火の手が上がった。

気はあせれども、少しづつ瓦礫をどけていくしかない。火事場のバカ力とは良く言ったものでてこを利用して、4人で力を合わせると少しづつ動きだし、やっとの事で瓦礫の山から引き出した。

妻は台所で次男の弁当を作っている最中に被害にあった。声のするあたりの板を叩き割ると、冷蔵庫と食卓で出来た空間に閉じ込められていたが無事だった。

そこまで見届けると力が抜けてしまい隣人二人に引き上げて貰った。

幸い二人とも骨盤骨折と診断されましたが命には別状無く、淀川キリスト教病院に入院させて頂き徐々に回復に向かっています。

この地震で神戸、阪神地区のアトピーの方も沢山被害を受けました。

幸い自宅の倒壊を免れた方でも、入浴出来ない、ほこりっぽい、食事が淡水化物に偏る、余震の恐怖などで皮膚症状が悪くなっている方が多くいます。

明けない夜はありません。春は必ずやって来ます。希望を持って共に頑張りましょう。 

Vol.4 ストレスとアトピー性皮膚炎 (1995.5)

アトピー性皮膚炎の原因のひとつとしてストレスをあげることが出来ます。
事実、受験や就職、仕事上のトラブルや責任等で悪化する事があります。
又、現在は情報化社会、ストレス社会といわれるように社会生活のテンポが早くなり生活そのものがストレスを受ける様になりました。

ストレスとは全て悪いものなのでしょうか? 
そういうわけではありません。

阪神大震災後に地震の恐怖や入浴が出来ない、きちんとした食事が取れない、ほこりっぽい等の原因でアトピー性皮膚炎が悪くなった方が多いと思います。

しかし、逆にボランティア活動や、生き抜いていく事に必死になってアトピー性皮膚炎の事なんか忘れてしまって、良くなってしまった方もいます。

このように同じ地震という出来事が良いほうに働いたり、悪いほうに働いたりします。

最近の患者さんにはフィットネスクラブで運動することを勧めていますが、汗を流してさっぱりして気持ちが良かったという方から、疲れ過ぎて却って悪かったとか、嫌々いっている方もいるかも知れません。

このように運動が一方では清涼感を、一方では悪化因子として働いています。

ストレスが全然ない生活も考えられません。もしあっても、それはぬるま湯に浸かったような、張り合いのない生活かもしれません。
ストレスが避けられないとすれば、ストレスと感じなくてすむように発想の転換を行って、難しいとはいえますが、越えて行かなければなりません。

ひとりひとりストレスと感じるものは違いますし、時や状況によっても違うでしょう。

ストレスが強すぎる時は動物がするように何もしないで早く寝るのも時には必要でしょう。

Vol.5 変えられるのは自分と未来 (1995.7)

「過去と人は変えられない、変えられるのは自分と未来だけ」

昨年の11月にステロイド・アトピー情報センター主催で行われたシンポジウムで神戸労災病院の清水先生が紹介した言葉です。含蓄のある言葉だと思います。

アトピー性皮膚炎の患者さんの性格は

1.気配りが過ぎる
2.人に優しく、自分に厳しい
3.のんびり過ごすのが苦手
4.予定を立て過ぎて、上手く行かないと落ち込む
5.高学歴の人が多い などと言えます。

この性格がアトピー性皮膚炎の治療に障害となっているといえます。
アトピー性皮膚炎の治療では体質を変えないとダメ、という民間療法が多くあります。
私は漢方薬や抗アレルギー剤などでは体質は変わらないと思っていますし、体質は変わらなくともアトピーは治ると考えて実践しています。

性格はどうでしょうか?

性格を変えるのは難しいけれど変えられると思います。
また、変える努力は出来ます。

私は幼い頃は人前で喋るのが苦手で通信簿には何時も、もっと発表しましょう、と書かれていました。

大学生になり、学園紛争の時代でしたから、街頭にたってアジ演説をすることにより、それほど苦になら無くなりました。
まだまだ、人前で喋るのが上手いとはいえませんが人並みには喋れるようになりました。

このように性格は変えようとすれば変えることができます。

アトピー性皮膚炎の治療の一環として、全ての人に当てはまるとは言えませんが、既に述べたような性格を変えることにより上手く行く人が多いと言えます。

のんびりと、余り他人の眼を気にせず自分に優しくすればよいと思います。

震災から早や五箇月たちました。その節には大変心配をおかけしましたが、家族も無事に退院し、私も精神的に立ち直りつつあります。

この場をお借りしてお礼申し上げます。

Vol.6 アトピー性皮膚炎の性格 (1995.9)

脱ステロイド療法を始めて5年経ちました。
初めの頃はステロイドを止めさえすれば良くなると思った時期もありました。

しかし、一度良くなった方が何かの拍子に悪化して来院するのをみたり、入院していると良くなるが、退院して家に帰ると悪くなる、一時的に使用したステロイドが離せなくなるなどが続きますとステロイドだけが諸悪の根源とは言えなくなってきました。

前号にも書きましたがアトピーの方は良く似た性格の方が多い。

他人に気配りが過ぎ自分を殺してしまう。
人に優しく、自分に厳しいとも言えます。
上司から仕事を今日、明日中にと頼まれると無理をしてでも
その日中に仕上げてしまう。

人付き合いが下手で学生であれば新学期や入学時、社会人であれば入社後や後輩が入社して指導の責任を負わされたりすると悪化したりします。

委員長でなく、副委員長、クラブならキャプテンでなくマネージャを好み、上と下との板ばさみになりやすいといえます。

また、予定を立て過ぎ、のんびりと過ごすのが苦手。
のんびり何もしないでいると罪悪感に捕らわれる。
女の方は、専業主婦は少なく、ちょっとでも時間があると資格を取りに行ったり、パートにでたり、キャリアウーマンだったりします。

上手くいっている場合は問題ありませんが、ちょっとした予定が狂ったり、仕事が忙しくなり過ぎたり、人間関係に歪みが来たりしますとアトピー性皮膚炎が悪くなったりします。

ストレスを溜め込まないためには性格を変えていくことから始める必要がある人もいます。

気持ちの切り替えを上手に行い、何時までも仕事や嫌なことをひきずらない。

自分に優しく、他人に厳しく。たまには一日のんびり何もせずに過ごすことも必要でしょう。
副委員長ではなく委員長として突っ走る方が楽な場合があるということも知りましょう。

一般に言われているアトピー治療には、これを食べたらだめ、あれをしたらだめというのが多すぎます。こういう(-)思考ではアトピーは良くならないといえます。

これをしよう、あれもやってみようと(+)思考に転じるのが性格を変えていくきっかけになると思います。

Vol.7 無題 (1995.11)

"インフォ−ムド・コンセント"は"説明と同意"と訳されている。
医療界に今求められている姿勢とされている。

アトピー治療にしても今までは「この薬を塗っときなさい。」と言われれば言われるままに塗り続けたというのが現状だろうと思います。

今、ステロイドの見直しが起こり、治療の選択を患者さんや家族が中心になって行おうという風潮が出てきている。

インフォームド・コンセントとは単に治療の方法を説明し患者が納得して同意すると言うだけでなく、その治療が客観的にみて正しいかどうか、現在の医療水準からみて妥当かどうかを示す必要がある。

そうでないと医者と患者が診察室で1対1で話している場合には患者は受け身になり、同意するしか無くなる場合もある。

診察室という密室で行われると必要でないのに卵や牛乳の除去を行い、稗や粟を食べさせられる悲劇がおこり、『水で治る』と言われ水を飲み続け電解質に異常をきたし、緊急入院したり、ステロイドを止めるつもりで受診した病院でステロイドの注射をされたり、
内服や外用を知らされずにされているようなことは数知れない。
後者の場合はインチキでありインフォームド・コンセント以前の問題である。

アトピー治療には民間療法なども加わり何が本当に正しいのかわかりにくくなっている。

アトピー性皮膚炎は自然に治ることがある病気です。
その治療法が効いたのかどうかは慎重に吟味する必要がある。
効果判定の一つの基準はその治療で何%の人が治ったかをはっきりと提示出きることです。

○○で治った式のものは注意しましょう。

インフォームド・コンセントに話を戻せばアトピー治療では
『俺についてくれば治してやる』、
また、
『何をしてくれるか?』式のものではなく、
患者が納得して自分で治療法を選択していく時代になっているといえる。

その場合に一番大事な点は、物事を否定的に見ずに、積極的・前向きに取り組むことといえる。

医者は現在の医療の到達点を説明し、その治療姿勢を後押しするくらいでよかろう。

Vol.8 無題 (1996.01)

アトピー性皮膚炎の治療で淀川キリスト教病院にかかられた方、
その後いかがお過ごしでしょうか?
皮膚の状態はいかがですか?

アトピー性皮膚炎とは思えないほど状態の良くなり何も気にせずに
生活できる人から、まあ良いけれど未だ気の抜けない方、ステロイドを再開している方や、休職中の方、悪化した方まで有り全ての人に満足して頂ける結果ではないことは承知しています。

私は阪神大震災の直撃から完全には立ち直れず、診察以外の仕事が手につかずに一年が経ってしまったという感じです。

しかし、この間に温泉治療ができる湯原温泉病院に加えて、アトピー性皮膚炎ばかり入院でき、相談員を置いて、アトピー性皮膚炎治療研修所、というスタイルで脱ステロイドが行える施設を増やすことができました。
そこでは患者交流を中心にして上手く運営されていると思っています。

今、アトピー性皮膚炎の治療には
『アトピーは水で治った。』とか『○○でアトピーを治した。』というような、それを使えばそれだけでアトピー性皮膚炎が良くなるかのように宣伝されている物が多く見られます。

アトピー性皮膚炎の治療は皆様方が経験されたように
『これしかない』とか
『こうすれば必ず』というようなものではありません。
いわゆる特急券のようなものはありません。

地道に生活を見直し、ストレスを少なくして、スキンケアに注意するという当たり前のようなことが基本になると思います。

このように当たり前の治療を行っている淀川キリスト教病院の治療結果を世間に公表したいと思います。

そこで、是非、皆様のアトピー性皮膚炎治療体験記を書いて頂きたいと思います。

私が淀川キリスト教病院で行っている治療の基本とその結果を書き、皆様に実際に苦労された話しなど、を書いてもらって一冊の治療体験集にしたいと思います。

つらかった時期のこと、良くなったきっかけ、淀キリで私が強調したことで頭に残っていること、温泉病院でのこと、現在特別気を付けていることなどなど、をまとめてもらえればよいかと思います。 
淀キリでは使いませんが、漢方薬やクロレラなどを使っていることを書いてもらっても構いません。

これからステロイドを止めようと考えている人達の頑張る、かて、になればと思います。

是非、協力をお願いしたいと思います。

Vol.9 アトピー研究所の試み (1996.03)

脱ステロイドを希望して淀川キリスト教病院を、受診される方が増え、入院治療の要望に添えなくなってきた。

淀キリではベッド数を増やしてもらえないため、淀キリの近くで治療法はそのままでアトピー患者を受け入れてくれる病院を探していました。
茨木の有床診療所でワンフロアー10人を受け入れてくれるようになり、95年6月から入院治療を行っています。

当初は淀キリで入院してリバウンドの落ち着いた人に移ってもらうつもりで始めたのですが、なかなかそのようにはいかず、結局比較的軽症でリバウンドもそれほど酷くならないだろうと予想される患者さんを中心にしました。

僕と中村先生が週に半日ずつ診察兼話しに行きます。 
月曜日から金曜日までは、アトピー性皮膚炎経験者でステロイド無しで落ち着いてきている3名に、相談員として詰めてもらい色々な相談にのって貰えるようにしています。

病院が置かれている環境はそれほど良いわけではありません。
街中にあり自動車や電車の音がやかましいくらいです。
看護婦さんも少なく、しかもアトピー性皮膚炎を理解しているわけではありません。
食事と寝るところを提供してもらったといった具合です。

しかし、元々軽症ということもありますが淀キリに入院するのと
同じペースで良くなっていきます。
入院することによって、仕事や学校に行かなければというストレスが無くなります。
このため入院するだけで良くなってしまうこともあります。

間食を禁止し、入浴して、早く寝る、病院だからダニが少ない、に加えてアトピー性皮膚炎の方ばかりですので、今まで悩んでいたことや、治療法などの話し合いができる。
ここまでは淀キリと同じです。 
淀キリとの違いは相談員の存在です。

1名は関西のアトピーネットワークから個人の資格で協力してくれている方で、2名は淀キリの僕の患者さんです。

自分もアトピーであり酷い時期を経験しているということが、患者さんにとって何でも聞ける、話せるという間柄になるのかもしれません。

患者さんどうしや、相談員とのかかわりをとおしてどうしてアトピー性皮膚炎になったか、何がアトピーを悪くするのかに気づいてもらい、ストレスの対処の仕方などを学んでもらいます。

皮膚科医が毎日いませんし、看護婦さんも少ないですから、患者さんどうしが自ら運営している様なもので、自分達で治そうという姿勢が淀キリより強いためかもしれません。

それが僕がアトピー研究所と呼びたい所以です。

Vol.10 無題 (1996.05)

アトピー性皮膚炎治療体験集は40名あまりの投稿を頂きました。

出版社も接触してきていますから、書店に並ぶ出版物として世に出すことが出来ると思います。

有難うございました。

皆様の経験を読ませていただきますと共通項が多いのに気づきます。

悪くなってきた原因は色々あるとしてもステロイド軟膏が効かなく
なってきたということです。

効かなくなったと思っている方の大部分はきちんと私達の指導に従えば効果の出る人が多いのですが、寄せられた人達の多くは本当にステロイドが効かなくなった方達です。

ステロイドを上手く使うのはアトピーにとっては非常に難しいといえます。

良くなってきたきっかけになったのは、

1.「アトピーは治る」と考えるようになって肩から力が抜けた時に楽になった。

2.アトピーと上手く付きあえるようになり、少しくらい悪くなってもそのうち良くなると余り気にしなくなった。

3.家族や友人の支えが大きかったということです。

もちろん皆さん淀キリの患者さんですから早寝早起きなどの日常生活や、間食しない、スキンケアの注意などは良く守ってくれているようです。

その上で気持ちの持ち方を変えるということが大事と訴えています。

驚くのは、今調子が悪くて生汁が出ていたり、再入院していても自分は治ると信じて頑張ろうとしている方もいたことです。

脱ステロイドで一番問題になるのは自殺を考えるほど落ち込んでしまい、いっそ死んだほうがましというような考えがでるほど悪くなることがあるという意見もありました。

こういう考えが出るということは私達医療従事者も問題にすべきと謙虚に反省しています。

脱ステロイドしている患者さんを支えていくサポートシステムが強固であればこういうことは起こらないと思いますし、いざとなればステロイドを使ってでも一度体勢を建て直して、再度脱ステロイドにチャレンジすればよいと思います。

一度止めたら二度と使ったらいけないというわけではありません。

結構いろんな体験が集まってきています。

すばらしい体験集になるのではと一人喜んでいます。

Vol.11 ストレスと睡眠 (1996.07)

ストレスにさらされるとどうなるか?

疲れやすくなり、集中できなくなり、気怠くて朝起きるのがつらくなります。

そのくせ夜は眠りが浅くなり熟睡できなくなります。

この症状は地震後に起こり、今は軽くなりましたがまだ続いている
私自身の経験でもあります。  

アトピーの人はこのうえに痒いという症状が加わりますから大変だろうと思います。

ストレスをどう軽減していくかということは非常に難しい問題と思います。

私の解決法はともかく早く布団に入りました。
8時でも、9時でも子供たちに笑われても早く寝るようにしました。
眠られなくても布団に入れば幾分かは寝ているようでした。

年が明けた頃からは睡眠は大分取れるようになり、昨日の疲れが残らなくなりました。

3月になって完全に大丈夫だろうと会議や、研究会をフルにこなしてみると1週間で疲れが溜まったために、また早く寝るという生活に戻し現在に至っています。

私のストレス解消方は以前は読書でした。

推理小説から文芸作品、哲学までどのジャンルでも読む乱読でしたが、落ち込んでいるようなときには推理小説をよく読んでいました。

しかし震災後は本を読むという事ができなくなりました。
半年位は好きな推理小説さえ読めなくなりました。

だからストレス解消としては寝るだけだったといっても過言ではありません。

私の場合は最終的には時間が解決してくれると思っていますが、寝ること以外にストレスを軽減出来たのは、私が落ち込んでいるときは妻が元気な姿勢をみせていたということが大きいと思います。

話をしていると元気になるそういう関係が良かったと思います。

ストレスを減らせといいます。

スポーツ、軽い散歩からジョギング、読書、趣味など色々推奨されますが実際にいざ行えと言われてもなかなか出来ませんでした。

寝ることは誰でも出来ます。出来るところから始めましょう。

そして、良くなった自分を想像するのもよいし、楽しい出来事ややりたい事を考えて夢をみることです。

決して自分のアトピーは治らないとか、どうしようも無いとか思わないことです。

ストレスと免疫、睡眠と免疫などの研究を少しずつ目にするようになりました。

そのうち何故睡眠をとれば良くなるかというようなことがわかるようになるかもしれません。

Vol.12 アトピーと向き合って (1996.09)

阪神大震災で全壊した我が家も1年7ヶ月ぶりに新築・再建出来、この8月に引越しました。 
この1年7ヶ月は仮住まいでしたから落ち着いて仕事が出来ず、ストレスのためか論文を読んだり、書いたりが出来ませんでした。

これからは徐々に回復してくるものと思います。
心配かけてすみませんでした。

先日、成人アトピー性皮膚炎の患者さんが、母親に連れられて来院しました。
すでにステロイドは使っていず、症状もそれほどでは無く、もう一息というくらいでした。

現在のアトピー情報をひと通りお話して、さらに良くするには早寝早起き、食べ過ぎに注意して、スキンケアに気を付けるとともに、嫌なことは嫌といえるように、思っていることを他人にはっきり伝えられるようにならなければといつものように話しました。

そして、体質を変えることは出来ないが、性格は変えうる。

物事に積極に取り組むように性格改造をはかれというようなことを説明しますと、ぽつりと「アトピーは治らなくてもよい」といいました。

十分時間をかけた説明をしたはずでしたから「治りたくなったら、いらっしゃい」といって帰しました。

アトピー性皮膚炎のような慢性患者は医者や薬が病気を治すのではありません。
患者さんが先頭にたってアトピーと向かい合い努力していく必要があります。

まだまだ医者の中には「俺が治してやる」という考えの人もいます。
患者さんの側にも「医者まかせや、特効薬に期待を寄せる」人もいます。

医療従事者や家族は患者さんの努力を援助するだけです。

ステロイドというのはある意味で特効薬だったわけですから、今更特効薬に期待をかけてもだめです。

だから、自分で治す意志のない患者さんはアトピーに逃げ込んでいると思われても仕方がない。

アトピーのままの方が家族が心配してくれて、何もしなくても楽と思っていると思われても仕方がないといえます。

アトピー性皮膚炎は治りにくい方もいますが、時間さえあれば必ず良くなってくる病気です。

皆様にお願いした淀キリの治療体験集が40人の投稿を得て、年内には出来上がる予定です。
その中にも記されていますが、希望を持って、楽観的に取り組みましょう。

明けない夜はありません。

Vol.13 プラス思考 (1996.11)

プラス思考(三浦弘行著 考古堂)という本が出ていました。

内容は、プラス思考が夢を叶えるという事です。

人生は思ったとおりになる。

将来社長になる、

ノーベル賞をとる、

オリンピック選手になる、

オリンピックで優勝する、

などなど夢をもって頑張ればそのとうりに未来が開ける。

一方自分はいくら頑張ってもだめだ、どうしようもないだめな人間だと落ちこんでしまうと道は開けないというような内容です。

このような成功例を延々と書いてあるので少々うんざりしてきますが、発想の仕方としては大事な点だろうと思います。

病は気からとして項を設けています。

信頼されている医者が

「この薬は良く効くよ。この病院の特製です」

と言ってメリケン粉を丸めたものを飲ましても、信じて飲めば病気が治ってしまうということは良くあります。

これをプラシーボ効果というのですが、このように患者の気持ちや考え方が病気の回復に影響するということが書かれています。

全くそのとうりで、クロレラ・漢方薬や超酸性水で治ったと思っている人の大部分はこのような結果だと言えます。

『治るということを信ずる』事で病気の治療に応用することができます。

この本では目標を達成する手順として

1.達成したい目標を設定する

2.目標達成に期限をつける

3.目標を書く

4.決意と宣言

5.計画する

6.熱意をもって行動 と、定石化しています。

これをアトピー性皮膚炎に応用すると

『綺麗になる、アトピーが治る』
という決意を紙に書いて見えるところに貼る。

そしてそれを家族や友人に宣言する。

他人に喋るのが恥ずかしければ、自分自身に何度も言い聞かせてもよいでしょう。

具体的な計画は、治るための手段ですからスキンケアであり早寝早起き、散歩、ジョギングなどでしょう。

山下君が行ってきた写経や座禅なども気持ちを落ち着かせて自然と一体になるという点では良い方法だと思います。

最後は治ると信じて、絶対に途中で投げやりにならないことです。

この気持ちを持ち続けるためにプラス思考で自己暗示を繰り返す事です。

嬉しかった事や、楽しかった事を思い出せば良いと書かれています。

そのために

誉められた時のこと、

感謝された時のこと、

感動や感激した時のこと、

満足した時のこと、

楽しかった時のこと、

などを何時でも思い出せるようにノートやアルバムにまとめておくとよいといっています。

簡単に読める本ですから一度読んでみられたら良いでしょう。

Vol.14 家族とアトピー (1997.1)

アトピー患者と家族との関係は独特のものがあります。

両親との結び付きがほかの兄弟より強く、

「親離れできていない。子離れが出来ていない。」

場合が多い様に思います。

親は一生懸命になってアトピーを治そうとして子供に世話をやきます。

「掻いたらだめ。」

「掃除しなさい。」

「甘いものを食べたらだめ。」

「○○がアトピーに良いそうだから使いなさい」

それこそアトピーに良い、と言われているようなものを
どこからか仕入れてきて試そうとします。

それがよくありません。
逆に悪くしていると言っても過言ではありません。

患者さんは患者さんで、もう、ほっといて欲しいと思いながら
親にはきっぱりとNOと言えないで、悶々としながらアトピーの殻に閉じこもったり、妥協して親の言いなりにイヤイヤ試してみたりしています。

このような状態の根源的な問題点がどこにあるかは未だ良く解かりません。
親子どちらにも負い目があるようです。

「どうしてアトピーになってしまった。」

「親の希望するような健康人になれなかった。」

 などなどです。

そして、子供時代にしっかり親に甘えることが出来ず親から 疎んじられていると思っている人もいます。

親はアトピーがある以外は駄々をこねず、反抗期が無くて育てやすかったと思っています。

子供は「良い子」が多いですから知らず知らずのうちに親が反抗するような事は要求したり、いったりしなくなります。

親が駄目と言ったら、いくらそれを欲しいと思っていても変わらないから、はじめから諦めているようです。

泣いて、喚いて駄々をこね欲しいものを手に入れた経験は無いようです。 親に反対されない範囲の中で自由に、幸せに、親に気に入られるように、中には親の引いたレールの上を疑問を持たずに生きてきた人もいます。

大人になって親の枠を出なければならなくなって、どうしてよいか解からなくなっている人もいます。

甘えることが出来ないにも拘わらず、親には一線を画して自我を保とうとする子供もいます。そのくせ親の同意を得ないと何も出来ないと言う人もいます。

一方、子供が大きくなってどのように接してよいか解からなくなっている親もいます。

親子関係をやり直してみましょう。

やり直すとはどういうことでしょう。基本は討論するということだと思います。

親が駄目といったら変わらないという様に最初から結論があるのではなくて、 どうして駄目なのか、何処を修正すれば駄目でなくなるのか、何故そうしたいのか、そうすれば何が解決つくのか、
他に方法はないのかなど、そこから新しい関係が開けていくのではないでしょうか。

討論するのを避けているし、下手です。

これは家族以外の人との付き合いにも同じことがいえます。
自分の言いたいことをきちんと他人に伝えることが出来る。
一番必要なことではないでしょうか。

アトピーに逃げ込むことを止めて、親に甘えてみましょう。

突っ張るのを止めましょう。

親の同意がなくても自分で出来ることがあればやりたいことをやりましょう。

親はきっと解ってくれると思います。
何時までも子供ではありません。

アトピー性皮膚炎も含めて丸ごと子供さんの事を受けいれてください。

アトピーでも構いません。

アトピーになったのは親の責任でもありません。

強いて言えば時代のせいです。

アトピー性皮膚炎ごときはきっと良くなります。

患者さんが言い出した事は、危ないなと思っても、親の権威で討論なしで抑えつけることはやめてください。

Vol.15 無題(1997.3)

淀川キリスト教病院治療体験集出版記念パーティー及びアトピー同窓会に140余名も出席していただき有難うございました。

震災後のストレスで診療以外の、本を読んだり文章を書いたりすることが出来なくなりました。 それが半年続きました。

時間とともに徐々に回復してきましたが、まだまだ以前の半分以下の状態です。

そのような状況で何か出来ないかと考えました。
自分が書けないのなら「人に書いてもらおう」、と考え皆様に治療の体験を書いて頂こうと考えたのが95年11月です。

早速皆様に呼びかけて原稿を募集しました。
96年3月までに37名の原稿が集まりました。

どこから出版できるかわからない、自費出版になるかも知れないというつもりで始めましたが、メディカ出版に勤める患者さんが「うちから出版してください」と協力してくれました。 

初期の入院患者さん、通院だけで脱ステロイドされた方、温泉病院のこと、アトピー研修所に入院された方、絶食治療された方、気の持ち方で症状の良くなった方など、いろんな方々から原稿をお寄せいただきました。

アトピー関係の本は沢山でていますが大部分は「商品を売り込むための物」であったり、「治ったのは奇跡というような物」です。

それでは希望がなくなります。
読めば安心する、ほっとしてまた頑張れる力の出るような本にしたいと思っていましたがそのような内容に仕上がったと思っています。

当初は96年末までに出来上がる予定でしたが、少し遅れて1月24日に刷り上り本を手にしました。
本を手にしますと出版パーティーをやりたくなりました。
それならいっそのこと同窓会と銘打って今までの患者さんに集まってもらいましょうと考えました。

何人位集まってもらえるか。

書いてくれた人は半分は集まってくれるだろうから、スタッフを入れたら50人は集まるだろう。
しかし呼びかけ方によっては100人は来てくれるかもしれないと考えました。
そのため場所の確保に苦労しました。
さいわい新阪急で50人で部屋を抑え、最大150人まで可能、最終人数確認は2月22日でOKという好条件が示されました。

このため呼びかけは93年までに入院して退院された方(体験集の原稿を呼びかけた方)、あとっぷの会員、アトピー研修所に入院された方に案内を差し上げました。

そのため兄弟で一人だけ案内がいって、もう一人にはいかなかったという事もあります。
短い準備期間しかありませんでしたから連絡が抜けていたなどの失礼があったかもしれません。御容赦ください。

当日は私の挨拶に続いて、神戸労災病院の清水先生に挨拶をしていただきました。

私の参謀として一番長かった村津(旧姓中村)先生に乾杯の音頭をとっていただき和やかに始まりました。

食事も一段落した頃より皆様方より自分の治療体験を語っていただきました。
始めはこちらからお願いしてお話し頂いたのですが、そのうち私にも喋らしてという方が増えてきて時間が足りないくらいになりました。

3時間は長いかなと思っていましたが、あちこちで歓談の輪が出来
治療体験や思い出話に華が咲きあっーと言う間に時間が過ぎてしまいました。

本も70冊売れたそうです。

また、集まれる機会を作ってくださいという依頼も沢山受け取りました。
今のところ予定はありませんが、機会があれば行いたいと思います。

どうも有難うございました。

Vol.16 無題(1997.5)  

最近、斉藤学氏や信田さよ子氏のアダルトチルドレン(以下AC)を読んでみました。 
95年後半から96年にかけて出版された物です。

まだまだ、この考えがどうなっていくか、私にはわかりません。

現在の精神的な混乱を理解するにはもっともな考え方だとは思いますが、解決の方法を提示できていないような気がして全面的に賛成できません。

ACと言う語はそもそも
アダルト・チルドレン・オブ・アルコホリックス
ということです。

アルコール依存症の親を持つ家族に生まれて成長し成人になった人のことをさします。

アルコール依存症とは

「習慣的に酒を飲む。その結果、周囲は困る。それを知りながら酒を止められない。」

そして、その妻は殴られたり、怒鳴られたりする被害者というばかりではなく妻も
「私がいなければこの人はだめになる。」
妻が面倒を見るという形で夫を支配する「共依存」という病気であるというふうに考えられるようになった。

その夫婦間のいさかいの中で育った子供たちは、いさかいの原因が
自分のせいではないかという罪悪感の中で成長します。

飲んでいる人はアルコール依存症、この人のせいで私の人生無茶苦茶とつぶやくのは母親(共依存)。
そしてその間に育った人がACです。

そしてこのACという考えがアルコール依存症の家庭ばかりではなく
家族関係が上手く機能していない家庭にまで拡大されたということです。

仕事をしすぎの父親(ワーカホリック)、
良妻賢母の共依存な妻、
その家庭の元で育つ勉強依存の子供

という構図がうかびます。

もっと勉強しなければ、社会に出るにはこうしなければいけない、
こうあるべきだと駆り立てます。

そしてその中で生き辛さ感じたらACということです。

現在の大多数の、典型的な中流家庭で育ち、周りの目を気にして、周囲の期待を先に先に読んで、おもしろおかしくその場を持たせて、明るさを支えている若者達の内面の苦しみ、それがACだそうです。

私もアトピーの患者の性格・考え方として

母親にはNOと言えない、いわゆる良い子が多い、仕事熱心、

他人と争いごとを好まず、自分の意見を表に出さずに引いてしまう、

などと指摘しました。

良く似ています。

彼等の言うとうり考えますと、大多数のアトピー患者はACに含まれてしまいます。

しかし読みながら、現在の生きにくさを理解するには適切な考え方かもしれませんが、何処か違和感を感じました。

何処に違和感を感じたか2.3指摘をしたいと思います。

現在の生きにくさは社会が高学歴化、スピード化されリストラで贅肉を削ぎ落としたなかで起こっていることが大部分です。
それを無視して家庭内に限定して親の影響を強く打ち出しすぎているように思います。

運命論的観念論で自分で生き方や環境を変えられる、変えていけるというふうにはとれません。

私はアトピーの治療は自分をコントロールするセルフコントロールが大切だと思っていますが、セルフコントロールは自分をもっともっとと急ぎ立てるために止めるべきといっています。

ACと認めグループカウンセリングで解決を探っていくという手法が述べられているが、具体的な解決法は明らかにされていません。

色々問題点はあるように思いますが、現在の生き辛さを理解する一つの考えとして読んでみる価値はあると思います。

アダルトチルドレン

Vol.17 アレルギーの行方(1997.7)

この春に日本アレルギー学会と皮膚アレルギー学会が1週間の間を
置いて行われました。 
どちらもアレルギーを中心にした学会です。

日本アレルギー学会は皮膚科ばかりでなく内科医、耳鼻科医や小児科医も参加する大きな学会です。

そこでの特別公演は河合隼雄氏の「こころの処方箋」でした。

シンポジウムは「こころとアレルギー病」で考え方や気持ちの持ち方、ストレスをどう捉えるかなどアレルギーが抗原抗体反応や分子生物学から離れた分野との関わりが必要であるということを歌い上げたような学会だという感じでした。

そしてワークショップは患者と医療従事者のパートナーショップという共同作業であるというテーマが随所にあり、アレルギー一辺倒ではありませんでした。

一方皮膚アレルギーではアレルギーの症例報告や演題が中心であるのは仕方ありませんが、特別発言としてアトピー性皮膚炎にステロイド軟膏をどう使うかという演題がありました。

2つの学会を比べてみますと雲泥の差があります。

一方はこころの問題を大事にし、患者と一緒に疾患とどう付き合って行くかという点を真摯に学ぼうとしているのに、一方はこころの問題などは眼中になく、ステロイドをどう使ってアトピー性皮膚炎を抑え込むかということしか問題にしていないという感じでした。

まだまだ、皮膚科医は問題の本質に気が付いていないのではないかと思いました。

4月の日本皮膚科学会でも、心の問題を取り上げたのはシンポジウムでの小生の発言と、アトピー児のキャンプを取り上げた演題が一例あっただけでした。

脱ステロイドでそれまで治らなかったアトピー性皮膚炎が治るようになりました。
半数の方は良くなるように思います。 
初期の頃はもっと成績が良かったように思います。

しかし、脱ステロイドで良くなってしまっていても3年後に再燃する方もいます。

又、脱ステロイド後もあまり良くならないでステロイドを再使用する方もいます。

3年後の再燃をステロイドのリバウンドという変な医者もいますが、そんなことは論外です。

成人になってはじめて、今までステロイドを使ったことがなくてもアトピー性皮膚炎が発症することがあるように、ステロイドのリバウンドというより、アトピー性皮膚炎の再燃と考える方が自然です。

こういうふうに経過の良くない患者さんが増えて行く背景を見ますと、その悪化原因に家族やクラス、会社などでの人間関係がスムーズにいかない場合や、仕事が忙しすぎたり変則勤務であったりする場合があります。

進級や、進学、部署替えや、上司が替わった場合や部下を指導するようになった時など緊張するようなことが続くと悪くなる場合もあります。

阪神大震災後に悪化した例もあります。

このようなことがはっきり見えてきたのはステロイドを使わないで一時抑えをしなかったお陰と思います。

ステロイドはこういうストレスを一時的に抑えこんでいただけでアトピー性皮膚炎の解決にはなっていなかったといえます。

そのストレスが一時的なものであればステロイドで抑えておいて、その間にストレスがなくなればアトピー性皮膚炎も良くなりますからステロイドを止めても悪くなりません。

続くようなストレスをどうするかを考えることなしにアトピー性皮膚炎の解決はないと思います。

Vol.18 頑張ろう神戸

震災の後「頑張ろう神戸」というスローガンが声高に叫ばれました。被災者はこのスローガンに励まされ、勇気づけられ頑張って復興に努力してきました。

しかし、震災後3回目の夏を迎え、「頑張ろう神戸」のスローガンは叫ばれなくなったように思います。声高に叫ばなくても復興が終了に向かいつつあるのでしょうか。

そんなことはありません。まだまだ仮設住宅には2万9千世帯以上の方々が生活し、私の家の周辺には雑草が生い茂った更地が沢山有ります。では何故このスローガンが叫ばれなくなったかというと、『精一杯頑張っている人に更に頑張れと鞭打つようでしのびない。』ということだろうと思います。

この震災から立ち直るには個人の努力の枠を越えている人が多いと思います。この人達が夢と希望を持てるようにするには、参議院に超党派で提出された個人補償を実現する必要があると思います。

「頑張ってアトピーを治した。何とかアトピー患者の役に立ちたい。」といってこられる人がいます。寝食を忘れ、アトピー性皮膚炎克服のために努力されたようです。

その意味では頭が下がるほどです。しかし、話を続けていますと「アトピーが治らないのは努力が足りない、私はこんなに頑張った。」というふうに聞こえます。

また、「アトピー地獄からの生還」というような本もあります。しかし、アトピーは不治の病でもないし、奇跡が起きないと治らない病気でもありません。

確かに患者さんの中には甘えていると思われるような人や、悪くなるとすぐ泣き付いてくる人もいますが、極少数です。大多数の方は頑張って私どもの言い付けを守り、日々努力されていると思います。

治らないのは努力が足りないわけではありません。努力が足りないというのは、叱咤激励されて、頑張っている体に更に鞭打っているようなものです。

神戸の個人補償に当たるものは何でしょうか。やはり夢と希望だといえます。アトピーは必ず良くなります。希望を失ってしまうと救いがなくなります。アトピーだから何も出来ないのではなくて、アトピーでも「これもやってみよう、あれもしよう」という積極性が欲しいといえます。

妙に頑張る必要はありません。出版記念パーティーに久しぶりにドレスを着ていこうと1週間前からわくわくしていたというお手紙を頂きました。わくわくするような事があると皮膚は輝いてきます。また、アトピーはストレスに反応したものですから、症状が出なければ、頑張り過ぎて過労死することもあります、アトピーはそれを知らせてくれるものとも言えます。アトピーは悪いばかりでもありあせん。

先日、電話で「アトピーは治りますか。」「土佐清水では完治しないといわれた。」「高尾病院でも治らなかった。」「淀キリは自家製の薬ですか、特別な薬は有りますか。」と聞かれました。それこそ暗闇のなかに引きずり込まれそうな声でした。

「アトピーを治すのは、薬ではない。医者でもない。自分が生活習慣、食事を見直し、人の意見を聞いて、きちんと自己主張を行い、希望をもってアトピー性皮膚炎を上手く付き合うことがアトピー性皮膚炎を克服する道である。」と話しておきました。

Vol.19 アトピーはステロイドの薬害?

先日、医者や薬剤師、患者団体などによる反薬害の会が阪大でありました。その中でアトピー性皮膚炎とステロイド問題が討議されました。

要請があったため小生も参加しました。集会に先立ち「ステロイドを使用したくない患者には、ステロイドを使用しないで治療する」皮膚科医の集まりも別にあり、それなりに楽しい一日でした。

皮膚科医の集いには大阪ばかりではなく、名古屋、広島、札幌、横浜と遠方からの参加もあり、脱ステロイドが確実に拡がってきているという確信を得ました。

工夫が語られ、自信をもって治療に取り組んでいる様子が話されました。そこでは小生よりも過激な意見も出て、ステロイドのことはまだ良くわからないこともあり、断定出来ないこともある、と釘をささねばならないこともありました。

アトピー性皮膚炎とステロイドでは、基調にはステロイド=薬害という考え方があり、同調できない点も多々ありました。開始時間を直前に遅らせたり、発言時間を守らないため、参加者がほとんど帰ってしまったり、討論の時間がとれないなど運営上の不手際も目立ちました。

患者さんの闘病暦の報告は聞くものの胸を打ちました。どんどん強いステロイドになっても効かなくなり、止めてここまで良くなってきたという報告は、医者があれこれ言うよりよっぽど説得力があります。

今でもステロイドを使わない治療は治療ではないと考えている皮膚科医にこそ聞かしたい。ステロイドを使わなくてもアトピーは治る。今まで当然のように言えることが数年前には何をいっているんやという雰囲気だった。

しかし、ステロイドが諸悪の根源だろうか。淀キリでもステロイドを使っている人もいます。使わなければ仕事も、外に出ることも出来ない人もいます。アトピーを取り巻く環境は、不登校や家庭内暴力、出社拒否症などと同じような根っこの場合があります。

アトピーにならなければ過労死したかもわからない人もいます。アトピーが悪いのではなくて、画一性、効率性を追及する社会に問題がありはしないか。ステロイドの問題もそこから出発しないと、医師と患者を反発させあうだけにしかならない。

Vol.20 アトピーとインターネット

淀川キリスト教病院でもインターネットに接続することが可能になりました。インターネットにはアトピー患者が立ちあげたホームページが沢山有り、興味を持って覗いてみました。

まず、最初に思ったのは自分の酷かった時の写真や、行なっている治療を公表していて皆元気だと思いました。必ず治る、この治療で治ってみせる、という心意気が、夢が、希望が症状の軽減に力になっているようです。

自分の意見が言え、自分を表現できる。それが良いのでしょう。しかし、皮膚科医がその治療を援助している、手助けをしているということはあまりに少なく、民間療法や水治療などを行なっている人が多いみたいです。

皮膚科医が手助けできればもっと良くなる人が増えると思います。これらの人達が皮膚科から離れていき、ステロイドしか治療が出来ないと思っている間はだめかなと思います。なんで皮膚科から離れていったかを皮膚科医は考えて欲しいと思いました。

インターネットの掲示板で書かれていることは本音なんでしょうね。思ったとおりの事が述べられていると思います。なかには主治医と患者がインターネット上で意見のやりとりをしています。

パソコンでは意見が言えても、面と向かうと言えないのではないかと勘繰ってしまいます。アトピー患者は思った事が言えない、自分の意見を抑えてしまう、等がありますからこれはまずいと思います。率直に、どこででも意見が言える、自分を表現できるようにしたいものです。

第三者を装いながら、特殊な治療の後援があるのではと考えさせられるようなページもありました。ウーロン茶風呂、水治療、温泉宅配等など。これらがステロイドを絶対悪と決め付けて、皮膚科専門医と対峙したような情報を一方的にながすのはどうかなと思いました。騙されないようにしましょう。

皮膚科医の意見も多く、なかにはホームページを開設している医師もいました。小生の講演などに対して、その開設者がどう思ったかを載せているコーナーもありました。学会で喋ったことが、他の医師がどう受け取ったかを知るには良い機会でしたが、違うんじゃない、そんなことは言っていませんよというような点もあり、こういうことが喋った本人の了解なしに、不特定多数に公表されているというのは、少し考えものだと思いました。

Vol.21  無題

昨年の5月号にアダルトチルドレンの事を書きました。その後もアダルトチルドレンブームは続きマスコミでも取り上げられました。子供時代のトラウマがその後の人生を決める。原因は子供時代にあるという考えが強くなりすぎました。
小生がアダルトチルドレンに抱いた違和感(97年5月)を再録します。

現在の生きにくさは社会が高学歴社会、スピード化され、リストラで贅肉を削ぎ落としたなかで起こっていることが大部分です。それを無視して家庭内に限定して親の影響を強く打ち出しすぎているように思います。

何が仕事や勉強に駆り立てているのかの視点が少ないように思います。運命的観念論で自分で生き方や環境を変えられる、変えていけるというふうにはとれません。私はアトピーの治療は自分をコントロールするセルフコントロールが必要と思っていますが、セルフコントロールは自分をもっともっとと急き立てるために止めるべきといっています。

ACと認めグループカウンセリングで解決を探っていくという手法が述べられているが、具体的な解決法は明らかにされていません。

というような問題点を提起しました。

最近<傷つきやすい子供>という神話 トラウマを超えて U.Nuber著 丘沢静也訳 岩波書店発行

という本を読みました。
表紙カバーに
「トラウマ(精神的な外傷)はどれだけ人の人生を規定するのだろうか。子供時代に受けた傷がその後の生き方を決定的に左右するとする広く流布したフロイト的な考え方の誤謬を指摘し、逆に人がいかに豊かな可能性を持つか、人生がいかにチャンスに富んだものであるかを明らかにする。マイナスをプラスに転じ、自分で自分の人生を作り上げるにはどうしたらよいのかを説く好著」
と宣伝されていました。

逆の意味で遺伝子に傾過ぎも見られますが良く書かれていると思いました。私は原因を他のもの(子供時代)に押しつけてもう変わらないもの(私の人生)として諦めてしまうのは大反対です。

自分も変わる、そして仲間も変わる、変える努力が必要だろうと思っています。ACは自分より偉大な力、神に委ねるという考えが根底にあります。それが必要な人はそれでもよいでしょう。

私は、人間の力を越えたなにかに頼ったりするのではなく人間の力を信じるべきと思います。人間てすばらしい、必ず変わる、その気持ちがあるかぎり、努力するかぎり。

Vol.22 アトピー治療は焦らず、夢をもって

「脱ステロイドでリバウンドを越えてしまうとステロイドを塗る以前のアトピー性皮膚炎の症状が残るんでしょうか?」と聞かれることがあります。皮膚科医からも「ステロイドの副作用を治したら、元々のアトピー性皮膚炎の治療はどうするのですか?」という質問を受けたことがあります。

脱ステロイドの初期の頃は特別にアトピー性皮膚炎の治療を行わなくても、リバウンド時期に注意した「腹八分目に医者いらず。早起きは三文の得。」などを実践しスキンケアに注意すれば、元々のアトピー性皮膚炎も良くなっていました。

そのため「アトピー性皮膚炎がどうして起こるのか解らないのに、どうして良くなるかなど解らない。そしてそれに答えを出すのは大学人の仕事であり、私達はその事実だけ報告すればよい。」と開き直っていました。

しかし、患者数が増えリバウンドが過ぎても良くならない人や、一度良くなっても、また悪くなる人、もう少しの所で足踏みしている人を見るにつけなにかアトピー性皮膚炎の治療を追加しなければならないかなと考えました。

しかし、良く考えてみますとアトピー性皮膚炎の治療として従来行われているものたとえば、「ダニ対策、スキンケア」などはすでにおこなっています。除去食は治療にはなりえないと、もともと考えていますし、早寝早起きなどの日常生活習慣の改善も既に指導していることです。

こう考えると行っていないのはステロイド軟膏を使うだけです。脱ステロイド療法として世に送り出した治療法は元々のアトピー性皮膚炎の治療の中に既に含まれていたといえます。

このため新しい事を追加するというより、初期の頃からやっていたことを徹底しました。そして力点をおいた点は夢を大事にすることであり、気分転換、ストレス発散などを重要視するようにしました。

アトピー性皮膚炎治療に王道なしといえます。
入院してストレスが取れるのか、まだ治療らしき治療を始めないでも、随分良くなってしまう方もいます。

先日も開業している先輩から入院させて欲しいと患者を紹介されましたが、病院に来た時点では随分症状は落ち着いていました。どうしたかと聞いてみますと、タイタニックを見て食事をしていると、「どうして自分がいらいらしているのか不思議になりスーと気持ちが落ち着いてきた」そうです。

勿論入院は必要ないということでしたから食事やスキンケアの指導をして帰ってもらいました。

また、ステロイドを止めてもなかなか良くならないでいらいらしていた女の方に、皮膚症状はそれほど酷くありませんでしたが、アトピー研修所でのミィーティングを見学して、気に入れば入院すればと1時間位話を聞いてもらいました。

翌日か翌々日かに電話がかかってきて「入院しません」といわれました。理由を聞いてみますと良くなってきたからとのことでした。何が良かったのか解りませんが本当に奇麗になってしまいました。

ヒントになりそうな点は、結婚式の日取りが決まっているのに、余りよくないから焦っていたこと位です。これらの例のようにちょっとしたきっかけで良くなる場合があります。なにかがきっかけで良くなるかは人によってまちまちですから詳しくは解りません。

人それぞれ治り方は違います。焦りは禁物です。既に述べている、食事・生活習慣、スキンケアをしっかり守りストレス発散、気分転換が上手く出来て、良くなってやるという夢、こんなことやりたい、あんなになりたいという夢、そしてそれを支えてくれる家族、仲間がいることが大きいといえます。

アトピー性皮膚炎は治してもらう疾患ではなく、生活習慣改善で自分で克服する疾患だろうと思っています。
尚、脱ステロイドの考え方を淀キリのホームページにトピックスとして掲載してもらいました。一度御覧ください。
http://www.ych.or.jp
http://www.ych.or.jp/clinic/hifu/

Vol.23 日本皮膚科学会総会(98年)の感想

5月末に大阪で日本皮膚科学会総会が開かれました。
今年もアトピー性皮膚炎やステロイドが話題の中心の一つでもありました。2・3気になったことを紹介します。

・FK506軟膏の有用性
サンデー毎日、週刊現代などで取り上げられましたから御存知の方もいると思います。ステロイド軟膏に比べて刺激感が強いなどのマイナス面もありますが、顔面の紅斑にはアルメタ軟膏より有用で、6ヶ月間の連用でも安全性に問題が無かったなどが強調されました。

しかし、FK506軟膏をやめてしまえるかというと6ヶ月経っても週に3−4日塗っている人が多く、止めてしまえないといえます。これがステロイド軟膏にとって変わる薬となりうるかはこれからの医師と患者の問題だと思います。この薬に頼ってばかりでストレスなどの、アトピーの憎悪因子を減らす努力を怠ると、ステロイドと同じ道を辿るといえます。

心の問題が皮膚科でも取り上げられるようになりました。
昨年の日本皮膚科学会総会でもアトピーが大々的に取り上げられました。

ステロイド軟膏の是非が主な内容で、脱ステ批判が中心でした。心の問題はその他の皮膚アレルギー学会などでも取り上げられることはありませんでした。しかし、日本アレルギー学会では心とアレルギーがテーマの3割ほどを占めていた程で皮膚科は遅れているなと感じていましたが、今年は日本皮膚科学会総会でも心の問題が取り上げられました。

しかし、皮膚科医の発表は不安や抑欝、睡眠障害などの精神症状のある例やストレスが明確な憎悪因子である場合は精神科治療が望ましいとしており、皮膚科医が心のケアにどう関与していくかという視点がなく、不十分だと感じました。

・ステロイド軟膏の問題
ステロイド軟膏の問題点は萎縮や口囲皮膚炎、多毛などの副作用が問題ではありません。こういう副作用は皮膚科医であればみただけで分かるはずです。問題は連用していると効かなくなることです。この点に関してはステロイド推奨派は口をつぐんだままです。

淀キリで脱ステロイドを始めた頃は止めれば良くなるという状況でした。しかし、4・5年前からは止めても良くならない、止めて良くなっていた人が何かの拍子に悪化してきてリバウンドの時と同じくらい悪くなることがあります。

またステロイド軟膏を使ったことがなくても成人になってアトピーが出てきた例も多くなりました。何故か原因ははっきりしませんが、不登校、ひきこもり、出社拒否症、家庭内暴力、過労死などの頻発と同じ様な根っこがあるのかもわかりません。ステロイド軟膏だけが諸悪の根源ではないなと感じる様になりました。

こういう状況を踏まえてステロイドを使いたくない患者さんにどう対処するかが皮膚科医に問われていると思います。ステロイド推奨派はステロイドの使用を説得して使うといいます。

説得されて使いうまくいく人もいると思いますが、納得された顔をして(この先生にはこれ以上いっても仕方がない)帰りにステロイドを溝に捨て、民間療法の門を叩く事になりかねない。そして不幸な結果になるばあいもあります。

医者不信になり温泉治療で感染症を起こし亡くなられた例が報告されていました。皮膚科医がきちんと患者の希望を聞きながら、ステロイド軟膏も含めて情報をきちんと伝え、治療していたらと思い残念でした。

Vol.24 情報源病 (1998.9)

ステロイド軟膏の長期連用による副作用に酒さ様皮膚炎があります。赤ら顔で、にきび様の丘疹、毛細血管拡張などを特徴とし、「酒さ」に似ているためこの病名がついていますが、典型的な特徴を有する患者はそれほど多くなく、問題になったのはステロイド軟膏を外用していると綺麗になるが中止すると紅班、丘疹、落屑、そう痒が出るため外用を止められないという例でした。

20年前にも治療は問題になりましたが、この疾患はステロイド軟膏の副作用ですからステロイドを中止するのが当然で、学会では止め方が問題の中心でした。止めると離脱皮膚炎が起こりますが、1-3ヶ月で落ち着いてきました。

最近でもこういう副作用の患者はいますが5.6年前からは同じようには治らず、難治な患者を経験するようになりました。ステロイド軟膏の副作用と告げるとアトピー性皮膚炎とごっちゃにして治りにくいもの、一生治らないものと思い込んでしまうようです。

その原因の一つは洪水のように流されるアトピー情報、ステロイド副作用情報にあると考えられます。

最近受診された50代の患者に
「ステロイドを止めれば1ヶ月でよくなります。」
といって返しましたが、秋には娘の結婚式があるそれまでに良くな
るだろうかと心配し、健康雑誌や家庭の医学書を読み漁ったそうです、それで不安になりパニックに陥り、家事も出来なくなったため夫と共に来院され入院を希望されました。

入院してステロイド軟膏の副作用であること、アトピー性皮膚炎とは異なること、アトピー性皮膚炎であっても治ることをきちんと告げ納得されると3週間で綺麗になって退院されました。

別の例では2ヶ月ぐらいで治るものが6ヶ月かかってしまった例があります。そして良くなっていたのに更に6ヶ月後に顔面だけではなく肘にも紅班落屑を認めアトピー性皮膚炎と診断せざるを得ないようになって再診された患者がいます。

このような本来副作用だけで良くなってしまう疾患が長く続いたり、パニックになったり、アトピー性皮膚炎の様になったりする原因の一つに情報の片寄があるように感じます。

現在のステロイド情報には少しでも使ったらだめ、止めれば必ずリバウンドが来る、逆に止めるとリバウンドが来るから使い続けなさいというものや、アトピー情報には治らないもの、治るのは奇跡、必死で努力しないと治らないような事実に基づかない情報が氾濫しています。

このような間違った情報ばかりに曝されるとそのまま治ってしまうものでもどんどん悪くなる場合があるということを知らされました。

これは情報による病「情報源病」と言えると思います。

事実に基づく正しい情報をよりどころにあして、肩の力を抜いてあとっぷの設立主旨であるアトピーを笑い飛ばせるようになりましょう。

Vol.25 ステロイドとアトピー性皮膚炎

10月10日―11日にかけて日本皮膚科学会中部支部学術大会が開かれ、アトピー性皮膚炎の治療―コンセンサスに向かってーが話し合われました。

小生もシンポジストとして出席しました。相変わらず東大グループはステロイドをきちっと使ってコントロールし、徐々にステロイドを減らせば良い。なぜステロイドの使用を拒否するのかという点に議論を集中させてきました。

10年前まで小生たちも行っていた治療を相も変わらず押しつけようとします。関西の皮膚科医たちは「ステロイドを塗っても効かなくなる症例は確かにある、アトピーは何時までもステロイドでコントロールする疾患ではなく、治ってしまう疾患である」−勿論、はしかのように一度治ってしまうと二度とならない疾患ではありませんから、ストレスがかかるなど条件が悪くなれば再燃することもありますーと小生の意見を支持してくれました。

もう一点は翌日中村先生に指摘されて気がついたのですが、脱ステロイドという言葉に嫌悪してこの言葉を封印しようとしてきました。この言葉が皮膚科医から出され、マスコミや民間療法に利用され、患者が民間療法に流れたり、ステロイド拒否を起こした点に問題があるそうです。

確かにそういう側面はないとはいえませんが、ステロイド拒否や不安はステロイドが効き過ぎたり、なにかの都合で塗らないと急に悪化したり、長く使っているのに良くならない点などが多く、マスコミや人伝などはその経験を増幅させているだけと思っています。

事実、当院で脱ステロイドを行いだしたのは、ステロイドを使わないで治療してほしいという強い希望があったからです。ただ最近は脱ステはあまり使わなくなりました。状況によっては封印してもよいかと思っています。

初期の頃はステロイドを塗っても効かなくなった人、30年以上使い続けても良くない人、ステロイドの副作用が強く出ている人、ステロイド依存症、などの人が中心で文字どおりステロイドから離脱する人達でした。

最近ではすでにステロイドを止めて数年経つ人、ステロイドを一度も使ったことのない人、ステロイドを止めて綺麗になった人が数年して再燃してきた人が増えてきました。ステロイドの離脱はすでに済んでおり脱ステとは言えない人も増えてきたからです。

何故、脱ステを行うかは学会でも何度も話しており理解されていると思っていましたが、東大グループにはこの治療法は小生の頭の中に忽然と現れ、世間をたぶらかしているとしか見えないようです。そして彼らはステロイド軟膏の効かなくなった例は診たことがないそうです。はっきりと皆の前でそう言いました。だから小生達が10年前に行っていた治療法を悪びれもせず披露するのではないかと思います。

実験的にもステロイドがリンパ球に働きIgEを産生したり、主にアトピーを起こすようなリンパ球の働きを強くしたりすることが解かってきました。このことが人にも適用されるならステロイドはアトピー性皮膚炎を悪くしたり、長引かせたりするということになります。

このことは今回の学会でも少し触れましたが、他のシンポジストは意識的に無視したのか問題になりませんでした。一月にアトピー性皮膚炎治療研究会が東京であります。その報告の際に詳しく触れたいと思います。

Vol.26 気持ちの持ち様とアトピー性皮膚炎

前回の小生の記事をみて手紙をくれた皮膚科医がいました。
アトピー性皮膚炎の治療で脱ステロイドを「状況によっては封印してもよいかと思っています。」「ステロイドの離脱は既にすんでおり脱ステとはいえない人も増えてきたから」という点についてです。

離脱はまだまだ進んでいず、脱ステロイドは広めていく必要があり、関東などではこれからという段階なので、感想のようなものでも書くべきでないとしかられました。小生がシンポジウムで落ち込んでいるのではと考えた励ましの手紙と受け取っています。

ストレスが皮膚症状に関係することは古い教科書に既に記載されています。一般でもヒャーとして鳥肌がたった、人前に出ると顔が赤くなる、手に汗を握る、イライラするとかゆくなるなど気持ちの持ち様と皮膚症状の関係がいわれます。

小生がアトピー性皮膚炎が気持ちの持ち様で症状が変わることに気付いたのはステロイドを使わなくなってからです。アトピー性皮膚炎は心身症といっている神戸労災病院の清水先生がそう言い出したのもステロイドを止めてからです。ステロイドを使わないために生のアトピー性皮膚炎が見えてきたといえます。

入院すると皮膚症状はステロイドを止めても落ち着いてくる。初期の頃はダニが少ないから、食事をきちんと食べるから、スキンケアを指導するからと思っていたのですが、入院当日に既に良くなりつつある人もいるため、最近では仕事のストレスがないから、人間関係が変わるから、入院が決まってホッと出来たからと変わってきました。

前記のことは絶対に大事な点で、おろそかにできない点です。しかし、上司がお見舞いに来ると急に痒くなったり、そろそろ退院出来るかなと退院を促すと皮膚症状が悪化しますから、気持ちで大きく変わる事があることも事実です。

当科で脱ステロイドして良くなっていた人が3年ぶりに来院しました。少し問題が生じ急に悪化したそうです。近医でステロイド剤をもらって少し落ち着きましたが、またステロイドを止めたいといって来院しました。

ステロイド軟膏の休養日を作りながら治療を開始しましたが思うように休薬日が作れず、ステロイドの効果もそれ程ではなく2・3ヶ月経過しました。長くなり止められないのではと心配するものですから、塗らないで2週間後にみせてもらうようにしました。2週間後には少し悪化するかなと思っていたのですが、あまり変化なしで来院しました。

「やっぱり塗りましたか」
「いいえ塗っていません」
「でも悪くなってないじゃないですか」
「はい、ステロイドを塗らなかったからすごく安心でした」
「では、逆に塗っている時は嫌々塗ってましたか」
「はい、とっても不安で、恐くて恐くて」

というような会話を交わしました。

2週間後には更に綺麗になっていました。ステロイドのように良く効く薬でも嫌々塗ると効かない良い例だと思います。

少し前の話ですが、一ヶ月くらい休暇がとれたから入院したいといって来られました。全身に紅斑があり入院の適応もあったのですが、
「一ヶ月の休暇がとれるのでしたら、家族で沖縄でもいって自炊しながら海水浴でもしていたら良くなるよ」
と提案したところそのようにされました。仕事のストレスがなかったからでしょうか、一ヶ月後には真っ黒に日焼けして皮膚症状は改善して現れました。

このように気持ち一つで良くなったり悪くなったり、薬が効いたり、効かなかったりするということです。

ステロイドを使わないということは一面では即効性のある治療を拒否することです。何がアトピーを悪化させるかを見抜き、ステロイドを使用せずにその問題を解決できるようになることです。

そのために湯治や東洋医学でいわれているように食生活、生活習慣(早寝早起き・適度な運動など)を改善することにより自然治癒する力を高め、気分転換をしてストレスをためず、困難な問題は一人で悩まず適切な人に相談しながら解決にあたることです。

Vol.27 皮膚科学会の現状(1999.3)

前々号に書きましたが、アトピー性皮膚炎治療研究会が東京でありました。

今回のテーマは「ステロイド軟膏」でした。

ステロイド軟膏の使い方、ステロイドのレセプターIgeとステロイドの関係、ステロイド軟膏の副作用まで幅広く討論されました。

200人近い皮膚科医が集まりホットな討論がなされ有意義な会になりました。

小生は「ステロイド外用療法の副作用」の指定演題が与えられました。

その時話した内容のダイジェスト版です。

ステロイド軟膏による副作用は小生が皮膚科医になった27年前には既に報告されています。

皮膚の萎縮、ステロイドによるにきび、糸みみずのような毛細血管拡張、紫斑などに加えて、酒さ様皮膚炎、口囲皮膚炎などが以前から知られています。

これらの治療はステロイドを止めるということで皮膚科専門医の意見は一致はみています。

ステロイド軟膏にはこれらの従来から知られている副作用しかないのか、次に述べる状況が副作用なのかが議論の対象になります。

ステロイド軟膏の副作用はこれらに加えて、アトピー性皮膚炎では

1.ステロイド抵抗性が生じる。

2.ステロイド依存を生じる。

3.中止後のリバウンドが酷くて、長期に渡る。 

が指摘できます。

ステロイド抵抗性アトピー性皮膚炎としては30年40年と塗り続けても良くならない

70歳台のアトピー性皮膚炎、塗っても赤みの引かない主婦、デルモベート軟膏を塗っても効かない、

ステロイドの局注をしても効かない痒疹にステロイドを止めたら良くなった写真を付けて報告しました。

そして98年2月から3月にかけてアンケートにより集計したステロイド軟膏の結果を発表しました。

505人中ステロイド軟膏は使用せず72名、

塗れば良く効く129名、

きちんと塗れば効く120名、

塗っても完全には効かない152名、

副作用20名、

その他12名でした。

当院に来られる患者さんの3割は効果の減弱を訴えています。

このようにステロイド効かなくなるということが第一の問題点です。

次は依存性という問題です。一日でも塗るのを休むと仕事に行けないようになる例。

幼児期から20年間手荒れに使用していたステロイド軟膏を中止すると前腕や顔面などステロイドを使ったことがない部分にも紅班が出てきて、アトピー性皮膚炎みたいになってしまう。

幸い半年で綺麗になり、手荒れもステロイドを使用しないのに治ってしまった例。

使うと何とかアトピー性皮膚炎を押さえ込めるが完璧ではなく塗るのを休むとすぐに悪化してくる。

成人アトピー性皮膚炎の一部はステロイド依存症として供覧しました。

止めたくても止められないのが副作用の2番目の問題点です。 

この問題についてはアトピー性皮膚炎について書かれたものではありませんがステロイド嗜癖として論文があります。

ステロイドアトピー情報センターのホームページに和訳が載せられていますから参照してください。

3番目の問題点は塗るのを中止すると離脱皮膚炎とステロイド軟膏で押さえ込んでいたアトピー性皮膚炎の症状が吹き出てくるいわゆるリバウンド現象が他の疾患より酷くて長時間かかる場合が多い点を指摘しました。

討論は第一の点に集中し皮膚科学会の理事長をはじめ東大グループはステロイド軟膏の効かない例などない、使い方が悪いというばかりでした。

本当にこういう例を経験していないのでしょうか。

それを認めると何かまずい事でもあるのでしょうか。

それとも東京の患者さんは軽症の人が多く、またステロイド軟膏が良く効く方ばかりなのでしょうか。

それにしたら東京から当院に入院治療を受けに来られる人もいるのですが、何とも不思議な話です。

Vol.28 青い鳥症候群 (1999.5)

「青い鳥症候群」 という本が震災にも散逸せず手元にあります。 清水将之著、弘文堂出版から昭和58年に出版されています。

この内容は偏差値エリートの末路という副題がついているように、どこかに自分の能力を活かせる所があると思って次々と職を変えるエリート青年に焦点をあてた教育問題を題材にしたものです。

何故このほんのタイトルが気になったかというと、最近アトピー性皮膚炎の治療のためにどこかに自分のアトピー性皮膚炎を治してくれる適切な治療法があるはずと思っていろんな治療法を試していると思えるような患者さん達を見るようになったからです。

現在の医療情報ではステロイド軟膏以外によく効く薬(一時的に症状を押さえるだけですが)はありません。それ以外の治療法はたまたま効果のあったというだけです。

「良い病院がないか」 「特効薬はないか」と考え、

A病院で水治療を試し、B病院では断食療法を行ない、C病院では漢方薬主体、温泉病院で温泉治療も試した。 

と次々と治療法を取り替えているような例もあります。 

「俺が治してやる、俺についてこい」 
式の病院にもよくかかっています。そして良くならずに、または一時的によくなってもまた悪くなり、当院にたどり着いたような例です。

問題点はアトピー性皮膚炎のステロイド治療に変わる新しい治療法があり、ステロイドをやめられると思っている事です。そして有名な先生が治してくれると考えていることです。自分で何とかしようとは思いもよらないようです。 

青い鳥を捜し求めるチルチルとミチルのように良いと聞いた治療法を試してみます。

アトピー性皮膚炎を治すには悪化原因を取り除き早寝早起き、腹八分目に医者いらずを心掛け、スキンケアを行なえば徐々にではあるが自然に治る病気です。悪化原因はダニや食物アレルギーの様なものは簡単ですが、対人間関係や仕事のストレス、誤ったアトピー情報など簡単でないことも多い。

リストラなど従来に比べて人員が減らされ、出張も日帰りなどになり忙しい、労働組合はあてにならない場合が多いなど社会的な問題もあり個人では解決つかない問題もあります。 

しかし、青い鳥の童話の結末が示しているように自分のなかに解決の糸口がある場合もあります。 

淀川キリスト教病院に通院するようになって 
「薬を貰うための受診」から 
「どうすれば自分のアトピーが良くなるか考えるようになった」 とアンケートに回答してくれた方が居ます。 

重要な点と考えています。

  

Vol.29 温泉病院でアトピー性皮膚炎の治療をしませんか (1999.8)

目的:小児ではアトピー性皮膚炎の海水浴療法、喘息の林間キャンプなど集団生活を通じて治療を行う試みは取り組まれていますが、成人アトピー性皮膚炎では羽曳野病院の海水浴療法しかありません。

今回、湯原温泉病院のべッドをお借りして温泉入浴、森林浴、散歩、患者交流などをとうしてアトピー性皮膚炎の治療を行いたいと思います。

日時:10月9日(土曜日)から10月16日(土曜日)まで

7泊8日 温泉病院に入院するという形をとります。

入院した日ー皮膚のチェック(玉置)、自覚症状のチェック

血圧測定 血液検査 {血液一般ー白血球、好酸球、GOT、GPT、LDH、BUN、クレアチニン、IgE(RIST)、検尿}

2−6日目(玉置が湯原に泊こみつきあうつもりです)

     6時30分〜7時     起床ー起こします

     7時〜7時30分     散歩、入浴

     7時30分〜9時     朝食

     9時〜10時        講義、討論会、患者交流

    10時〜12時       自由時間

    12時〜13時       昼食ー一度くらいは川原でバーベキュウをしたいとおもっています。

    14時〜16時       散歩、山歩き、鱒釣、露天風呂めぐり

    18時〜19時       夕食
    19時〜21時       入浴、討論会、患者交流

    21時           就寝ー少し早いですか

最終日ー初日と同じ検査およびチェックをして解散

募集人数:高校生以上の男女各5名くらい、それまでの治療を変えないのを基本にします。16日以降の引き続き入院も可能と思います。

参加費用:病院に支払う金額2割負担で35000円、3割負担で50000円くらいです。
バーベキュウ、鱒釣、入浴料金などは実費をふたんしてもらいます。
軟膏、飲み薬などは病院からもらえます。病院までの交通手段は各自の責任で確保してください。

申込方法:玉置まで直接申し込んでください。満員になりしだい締め切ります。

そのため直前のキャンセルは困ります。

Vol.30 ステロイド軟膏とPCB・ダイオキシン

PCBやダイオキシンの毒性はカネミ油事件やベトナム戦争の枯れ葉作戦に使用された合成除草剤に含まれたダイオキシンによりベトナム帰還兵に発生した癌や、子供の身体障害で明らかです。

最近にわかに問題になったのは、それは極く微量であっても胎児期に暴露されると内分泌撹乱物質として働き精子数の減少や、メス化(雄としての性行動をとらなくなる)が起こることが報告されてからです。

PCBやダイオキシンは化学的に合成されたもので生物界には分解する酵素がほとんどありません。そして、脂肪に親和性を持っています。また、尿や糞便には排出されません。人体に取り込まれた場合は脂肪に蓄積され母乳や毛穴から少しづつ排泄されるだけです。何時までも体のなかに残ります。

まだまだ成人に毒性を与えるほどの量は蓄積されているわけではありませんから大人世代は安泰です。しかし今の量でも次の世代に影響を与えるのではないか、もう既に精子数の減少などが起こりつつあるのではないかと心配されているわけです。特に母乳中には高濃度に含まれ、乳児が一日耐容摂取量より大量摂取するのは問題です。PCBやダイオキシンなどを環境から排除するために科学技術を使いたいものです。

ステロイド軟膏もPCBやダイオキシンと同じように考えて分解されない何時までも体のなかに残っているように思っている方もいます。

民間療法を進める人のなかには意識してそういうふうに吹き込んでステロイド軟膏を恐いものと思い込ませようとしている人もいます。

ステロイド軟膏も化学的に合成されたものですが元々副腎から分泌されるステロイドに似して作られていますから分解する酵素があります。皮膚では強い効果がありますが吸収されると徐々に分解され血中に入る頃にはほとんど失活するといわれています。

ヘドロのように皮膚の下に溜まるわけではありません。効果がすぐに無くなる事はステロイド軟膏を使ってコントロールしていたときに一日塗るのを忘れるとすぐに赤くなることを思い出してもらえればわかると思います。

ステロイド軟膏にも内分泌撹乱物質としての性質があるのではとして報告されたことがあります。週刊誌でも取り上げられましたから読まれた方もいると思います。

「ステロイド軟膏を使っていた女性から生まれた子供は90%女の子」ということです。

「メス化する自然」(デボラ・キャドバリー著 集英社)に言われている現象は男性器の萎縮や、メス同士で巣を作ったり、性転換したり、精子が著しく減少したりなどである。

人間であれば極端に小さなペニスで女の子と間違えてしまう事に該当する。男か女を決めるのはY染色体を持つかどうかですから、それは受精したときに決まります。

Y染色体は父親由来ですからステロイド軟膏を使った男性の子供がY染色体を持つ精子が何らかの理由で弱く受精することが出来ず、結果としてXXの染色体を持つ女が生まれる、即ちステロイド軟膏を使った男子の子供には女の子が多いというなら意味があるかもしれません。

また、ステロイド軟膏を使っていた女性から生まれた子供に半陰陽が多いとなれば大問題になるでしょう。しかし、「ステロイド軟膏を使っていた女性から生まれた子供は90%女の子」というだけでは数が少ないですから「そうですか」としかいえません。今までのデータでは内分泌撹乱物質とはいえません。無闇に心配することはありません。

今回はステロイド軟膏を擁護したようになりましたが、決してステロイド擁護派になったわけではありません。正しく理解してもらおうと思っただけです。

[岡山湯原温泉 玉置先生付き添い入院]は女性の方はベッドが
満席ですが男性はまだ空きがあります。
希望者は淀川キリスト教病院 玉置先生まで

Vol.31 温泉・自然療法in湯原温泉

あとっぷの機関誌にも紹介してもらいました。アトピー治療を目的とした湯原温泉病院を舞台にしたアトピー治療の試みが予定通り10月9日から16日にかけて9名の参加を得て実行されました。

温泉に入浴するだけではなくハイキング、散歩などによる森林浴、ます釣り、バーベキューなどを行い自然に親しむ。また、6時半に起きて7時からの散歩を行い規則正しい食事をとり、早く就寝するなど生活習慣を淀キリで言う「腹八分目に医者いらず、早起きは三文の得」にあわせてもらいます。

朝9時から私が毎日アトピー性皮膚炎やステロイド軟膏の功罪、アレルギーなどの講義を行い質問に答え、氾濫しているアトピー情報を整理し治療に役立てました。また、患者交流をはかるなどが本企画の中心になりました。

湯原温泉に行っただけで、温泉に浸かってのんびりしただけで、ゆったりした気分になり、皮膚状態に改善をみた人もいます。患者交流で思いつめていたことが喋ることが出来、すっきりした人もいます。

ます釣りで小さいころ親父さんと一緒に行った事を思い出して両親との関わりを見直した人もいます。バーベキューではアウトドア活動を楽しみ、森林浴で気分が楽になるのを経験した人もいます。いつもは出来ない質問を一緒にお茶しながらできて納得された人もいます。小生も8日間の休暇のつもりで淀キリのことを忘れて楽しませてもらいました。

参加された患者さんに皮膚状態を前後で100点満点で採点してもらいました。変わらないという人もいましたがほとんどの人はよくなっているという点数をつけてくれました。

かゆみに関しては同じように採点してもらったのですが、悪くなっている人が3人いました。かゆみは皮膚状態の改善よりかなり遅れて改善してきますから仕方がないかなと思います。検査データでかなり改善している人もいます。感想を自由に書いてもらいました。参加された患者さんには良かったと評価され、今回の企画は成功と考えています。

アトピー性皮膚炎の治療に何が一番大切か。それは現在のストレス社会で歪んでしまった生活習慣、食生活を元に戻し、気分転換をきちんと行いストレスに負けないようにすることだと思います。治るという希望を大事にすることです。

Vol.32 プロトピック軟膏

一部の人からは発売が待たれていたFK506軟膏といわれていた免疫抑制剤の軟膏がプロトピック軟膏として11月24日から使えるようになりました。

淀川キリスト教病院での使用経験はまだあまり在りませんが、学会で発表されたり、大学の後輩に聞いた内容からはステロイド軟膏にまさるとも劣らない、非常に良く効く薬だという印象です。発売を前に専用誌に使用ガイダンスがでたり、メーカーから説明書をもらったりしましたから読んでみました。 その内容をかいつまんでお話してみます。

本剤は16歳以上のアトピー性皮膚炎患者に使用が限定されており、小児には使用できません。また妊婦または妊娠している可能性のある婦人にも禁忌とされています。

皮膚のバリアーが障害されているビラン面には使用しないように警告がなされています。もちろん引っ掻き傷にも使用すべきでないと書かれています。 

使用量は1回5g、1日10gまでと制限がついています。経皮吸収による腎障害など全身性副作用を非常に気にしています。また、PUVA療法、UVB照射など紫外線治療を受けている患者には使用しない、とされています。これは免疫監視機構の破綻による皮膚癌の発生を危惧した措置といえます。

使用に際してはほてり感、ヒリヒリ感等の刺激感が高頻度(2割から3割と言われています)に起こるようですが使い続けていると収まってくるという事です。 そのため使用前にヒリヒリすることがあっても使い続けなさいと充分に説明することとなっています。

効果はリンデロンVクラスのようです。しかし、期待された割には使いにくい制限がたくさんあります。ステロイド軟膏にこれくらい慎重な使用説明がなされたら今のような状況は生まれなかったと思います。 

問題はこの薬を止められるかどうかですが、今までの報告では問題なく使い続けているという報告で、良くなって止めたと言うことはききません。だから、これに頼っていつまでも使い続けるとなるとステロイド軟膏で起こった依存が起こらないとはいえません。この薬もやはり症状を押さえるだけですから、症状を押さえている間に原因を見つけ、減らしていかない限り問題の解決にはならないと思います。

この薬がアトピーで苦しむ方々にとって救世主になるとは思えませんが、ステロイド軟膏の効果が減弱したり、副作用が出た人には止めるしか方法がありませんでしたが、一時、時間を稼ぐことは出来ると思います。 

Vol.33 不適切治療について (2000.4)

新聞によりますと日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎・不適切治療調査委員会の発表があったそうです。

入院の必要があった患者のうち44%が医学的に問題のある民間療法や特殊療法を受けたことが原因と発表されています。  
この中には「脱ステロイド」とよばれる治療法とことさら強調されていました。
とりようによっては淀キリの治療まで不適切治療であるととらえかねません。

淀キリで治療を受けた方はおわかりと思いますが、脱ステロイドとはステロイドを使わないで食事・睡眠などの生活習慣を見直し、スキンケアをし、ストレスを溜めないように気分転換をして自然治癒をはかる治療です。

そうした過程のなかで今までならステロイドを使って切り抜けていたストレスを、使わないで対処できるようになることです。

止めるだけで治ってしまうようなステロイドの副作用としか思えない方もいますが、大多数の患者さんは止めるだけでは第一歩を踏み出しただけです。

これらに気を付けてセルフケアしていくことが必要です。

脱ステロイドの提唱者としては脱ステロイドという言葉が一人歩きして、「ステロイドは悪」と民間療法などで使われ、ステロイドを止めて健康食品や化粧品、温泉などでアトピー性皮膚炎を治すという手段として使われていることに危惧を感じます。

ステロイドを止めて水や健康食品・化粧品などで、アトピー性皮膚炎が良くなるわけではありません。

発表で問題になるもう一点は委員会が、アトピー性皮膚炎の患者が何故民間療法などの不適切治療に向かうか、ということに思い至らないかです。

不適切治療を受けた多くの患者さんははじめの頃は皮膚科医により
ステロイド軟膏による治療を受けています。
そこで上手くコントロールされなかったり長期連用によりステロイド軟膏の効果の減弱や、副作用が出てきたために民間療法に足を向けたといえます。

もしその時点で調査にあたった大学病院を受診してステロイドを使いなさいといわれたら納得したふりをしても、帰り道で薬を捨ててしまうか、民間療法に駆け込むかでしょう。

こうなった患者さんはステロイドを使うというだけで皮膚科から遠ざかります。

ステロイドを使いたくない意思を、納得させた(?)と威厳で押さえつけるのではなく、尊重して治療を開始出来ないものかと思います。

もっと問題なのはアトピー患者はインターネットなど医療情報の収集にたけており、その病院の治療方法を知っていることが多く、ステロイドを使いたくない方は初めからそこへは行かない事もあるでしょう。

ステロイドが効かなくなって民間療法に逃げた患者が正しく大学病院を受診した時には
「ステロイドは良く効いた。だから効かないというのは間違いである。」
と言われます。

ステロイドを長期間休薬していますから効果が復活しているだけで、本当にステロイドの効かなくなった例を知らない事が問題です。

こういう事ばかりいっていますと皮膚科学会がスポイルされてしまう可能性があります。

Vol.34 ストレスとアトピー性皮膚炎 (2000.6)

ストレスに曝され、脳がその危機を察知するとまず視床下部が働き交感神経に作用しノルアドレナリンを分泌します。 
そのため血圧が上がり心拍数があがります。 

緊張するとどきどきして脈が早くなることを経験したことがあるでしょう。
色の白い相撲取りさんが時間一杯に成るにつれて体に朱がさし赤くなっているのがテレビでもわかります。 血液が脳や筋肉に送り込まれ反撃の準備をするわけです。 

もう一つ視床下部から下垂体前葉に働き副腎皮質刺激ホルモンが出され副腎皮質からステロイドが分泌される経路があります。 

ステロイドには正式には糖質コルチコイドといわれ脂肪や蛋白質をブドウ糖に変換しエネルギー源として神経や筋肉に供給します。 

ステロイドが出続けると血糖値が上がり、糖尿病になります。 

ステロイドは、また、炎症を押さえたり、リンパ球などによる免疫作用を押さえます。 
そのためアトピーなどのアレルギー疾患に使われます。

こうした反応は危機に対する身を守るために自然に組み込まれている防御反応です。 

この反応はストレスが無くなればフィードバックがかかり押さえられますが、今日のようにストレスにさらされ続ける事が多い情報社会の中ではこの反応が長く続き、心身のバランスが崩れる所迄行ってしまうことがあります。

生活習慣病と言われている高血圧や糖尿病も多くはこのせいです。 
アトピーではストレスに曝されてストレス状態であっても、そのことに気付かない事が多いようです。 
そのため更に頑張ってしまい悪化することもあるようです。

免疫・アレルギーを司るリンパ球にもたくさんの種類があることが解ってきました。 

なかでも水疱瘡などを治すTh1細胞とアトピーなどを起こすTh2細胞が有名です。 

ステロイドは既に述べたようにリンパ球を押さえますが、Th1に対する場合の方が強くTh2を活性化する場合もあります。 アドレナリンも同じようにTh2を活性化する報告がされています。 

湾岸戦争に従軍した兵士の無気力や7.8年前に週刊誌で話題になった慢性疲労症候群もストレスが原因でTh2が優勢になっていると報告されています。

ストレスがアトピーの悪化原因であることはこのことからも確かめられています。

外界から加わる負担となる刺激(ストレス)がストレッサーといわれ個々人に働き、その個人の条件により特有の受け止め方がなされ、個人のストレス状態になっていくそうです。 

だから同じようなストレスを受けてもそれをバネに出来る人や、なんともない人から、大きなダメージになり、不安症状や憂鬱になったり、皮膚症状がでたりする人もいるわけです。

ストレス反応を起こしやすい思考パターンは公式化されています。

?全か無か思考:物事を白黒はっきりさせないと落ち着かない。

?過度の一般化:些細な事実が全てであると決め付けてしまう。

?拡大解釈過小評価:自分の失敗や他人の成功を過大にとらえ、自分の長所や他人の苦労に気がつかない。

?心のフィルター:一つのことにこだわり過ぎて、現実を見る目がくもってしまう。

?結論の飛躍:根拠が曖昧なのに性急に結論づけてしまう。

?マイナス思考:先々まで悪いほうへと考えてしまう。

?すべき思考:なにかをしなけばならないと自分を縛り付ける。

?感情的決め付け:自分の感情のままに物事をとらえ、率直に現実を受け入れない。

?レッテル貼り:自分や他人に対し一方的な見方でどうせだからと決め付けてしまう。

?個人化:すべて自分が処理しないと気が済まない。全て自分の責任にしてしまう。

どうですか、当てはまりませんか。 こういう考え方の人はストレッサーに曝された場合ストレスを受けやすく、過剰に分泌されたアドレナリンやステロイドによりTh2細胞が活性化されアトピー性皮膚炎などの身体症状を起こしやすいようです。 

Vol.35 日本皮膚科学会の動向 (2000.8)

2000年6月
今年の皮膚科学会ではアトピー性皮膚炎の治療ガイドラインが発表されました。

詳しいことは発表の場にいませんでしたからわかりませんが、新聞報道などによると昨年発表された中間報告とほとんど同じものと考えて良いと思います。

ステロイド軟膏ほど炎症症状をコントロールできる薬はないからステロイドを使って症状を抑えましょうという内容でしょう。

中心になっているメンバーのなかにも2.3年前まではステロイド軟膏の使用法しか言わなかった教授が、心のケアを重視するようになるなど少しづつ変化はみられますが、まだまだ全体としてはステロイド・アトピー性皮膚炎の事を良く理解していないためではないかと思います。

小生などを変人(異端児)扱いする、このままでは皮膚科学会が患者さんから見放されてしまうということを中心になっている人達は理解していない。

そんな中でも新潟大学医動物学教室の安保徹教授が面白い招待講演を行いました。

抄録(発表内容を事前に簡単にまとめたもの)をみるとストレスと免疫のことについて話されるようでした。

話が進んでいくとアトピー性皮膚炎とステロイド軟膏が講演の中心になりました。

ステロイドはリンパ球を減らし、慢性炎症を引き起こす。

ステロイド軟膏は酸化コレステロールになって組織に沈着し、組織障害をおこす。

これを抑えるためにより強いステロイド軟膏を必要とする。

アトピー患者のステロイド離脱の経過と成績、などなど現在の皮膚科学会の意向とはかけ離れた内容でした。

小生は基礎学者からもステロイドに対する警鐘が出されたわけですから、手を叩きたいような心境でした。

同じ講演を聞いていた不適切治療健康被害実態調査委員会の委員長は憮然とした表情でした。

皮膚科学会の内実を知らないで話されたものと思っていましたが、御存知だったようです。

あとで安保教授の書かれた論文(治療:82巻p1794-p1803.2000年)を手に入れ読んでみました。

上に述べたことに加えて次のようなことが書いてありました。

正常マウスに比べて12時間拘束ストレスをかけたマウスを比較しますと、後者の白血球からは炎症を起こすサイトカインを放出します。
さらに、ステロイド投与してから拘束ストレスに曝すと、拘束だけのマウスに比べて3〜5倍のサイトカイン濃度になっています。

ステロイドを使っているとストレスにも弱くなりそうです。

巻末に

「ステロイド外用薬は正しい使い方をすれば問題は起きない」

「不安を感じて、民間療法などで離脱などをためすので悪化する。これを、支持するマスコミも悪い」

このような医師にあってみると、真面目で勉強熱心で、問題を起こすこと、問題に巻き込まれる事を極度に嫌う人のように思う。

多分、大学や病院で先輩から学んだことに問題点がない場合は、上記した医者は本当に良い医療活動を行うであろうし、現在も多くの部分では患者を救っている事であろう。

しかし、医学は未熟で問題点も多い。(中略)

このような時に、あまりにも現在医療に信頼を置いた医師は、現在ある治療に疑問を持つことなく、現実から目を背けて生きることになるのではないか。

と苦言を呈しています。

臨床家ではありませんから首をかしげたくなるような所もありますし、少々強引な所もあります。

アトピーの原因がステロイド軟膏に片寄りすぎの面もありますがもう一度お会いしてゆっくりアトピー談義をしてみたい方だと思いました。

Vol.36 日本皮膚アレルギー学会 (2000.10)

日本皮膚アレルギー学会が大阪でおこなわれました。

羽曳野病院の副院長をされていた青木先生が会頭でした。
会頭講演はアトピー性皮膚炎とステロイドの問題を中心に話されました。

ステロイド軟膏を使っていた例と使っていない例では重症度ではほとんど差がなかった。

ステロイドを使っていた例にはステロイドの減量・中止が、ステロイドを使っていなかった例にはステロイドの少量の再使用がうまくいった例が多いと話され、ステロイド問題を解決する道筋を述べられた。

ステロイド軟膏の効かないアトピー性皮膚炎があるのかないのか。

一方、ステロイド軟膏を止めても良くならないアトピー性皮膚炎をどう治療していくのかの問題提起をされました。

ステロイドが効かなくなっているのはステロイドだけの問題だろうか。

心理的・社会的な問題はなかろうか。

実感としては塗っても効かない例はあるようである。

そして、皮膚科医以外のデータとしてステロイドの効果がステロイド・レセプター数や黴菌の毒素などで減弱するということが報告されていると示されました。

どういう皮膚症状ならステロイドを使わない方がよいか、を早急にまとめる必要を提起されました。 
難しい問題ですが何とかまとめていきたい課題と考えています。

アトピービジネスにも言及されました。

まず、ステロイドを使いたくない患者さんはいる。
こういう患者さんはステロイドを使わないで治療してくれる少数の皮膚科医を訪ねるが、大部分の皮膚科医がステロイドの使用に固執していると大部分は民間療法や皮膚科医以外に流れる。

言葉としては少し違っているかもしれませんがこういう風に話されました。
アトピービジネス論を展開している人に聞かせたかった内容でした。

アトピーとステロイドの問題では攻撃の対象にされることが多いこの頃ですが、実際にアトピー性皮膚炎をライフワークのように診てきた臨床家の意見でバランス良く諸家の意見が取り入れられ、久しぶりに気持ちよく聞くことが出来ました。

本当に患者さんのことを良く診ていると、同じ思いになるということがわかり安堵しています。

Vol.37 医者と患者の関係 (2000.12)

診察室で「先生、あの薬は効きません」「少しもよくなりません」
といわれますと、何か悪いような気になってステロイド軟膏が処方されます。

「以前にかかっていた医者では良くなりませんでした。」と聞くと、よし治してやろうとより強いステロイド軟膏が処方されます。

治りが遅いと
「あそこに行っても治るまで時間がかかる」

「なかなか良くならない」
などといわれますと困りますから、批判をとりたい医者はすぐに治ったように見える薬を使います。

時間はかかりますが薬を使わなくても良くなりますと説明しても初診料か再診料しかもらえませんから、薬を使う場合もあるでしょう。

あの薬が良かったと思ってくれるかもしれません。

一方、医者には診察室に入って来た患者さんを治すものという
思いがあります。 
性疾患や感染症などは医者の注射や内服薬を指示どうり使用すれば良くなる場合もありますが、アトピー性皮膚炎のような慢性疾患は薬で治すものではないということを医者も知るべきです。

ステロイド軟膏は一時押えでしかありません。決して治してしまう薬ではありません。

情報をきちんと出して、治そうと努力する姿勢がでるように援助すべきです。

しかし、今でも自分が治すもの、治せるものという考えの医者が多いといえます。

だから、
「ステロイドは使いたくありません。」といわれるとそれ以外に治療の方法がわからない場合は怒ったり、よそへ行ってくれということになるのです。

先日大阪で開かれた日本皮膚科学会中部支部学術大会でマスコミの
代表もシンポジストとして参加するアトピーフォーラムがありました。

司会はステロイドを使ってコントロールすべきという金沢大の竹原教授とアトピー協会の後藤田さんの二人。

初めに竹原教授のマスコミ批判、脱ステロイド批判があり、どうなることかと思って聞いていましたが、羽曳野病院の片岡先生がステロイドの効かない例は確かにある。脱ステロイドで治るという発想の転換が提起されたが、それを排除するのではなく、皮膚科治療の中に取り込むべきという趣旨の発言をされました。

その後、患者の代表やマスコミ界の代表は医療不信は初めからあるわけでなく、初期の治療がうまく行かなくてステロイドを勝手に止めたり、閉じこもったり、民間治療に走ったりするわけで、原点はきちんと診断と治療が出来なかった医療側の問題であると指摘された。

医療不信には強いものはあり、昔と同じことをしていてはダメ、ステロイドが第一選択薬のガイドラインで大丈夫かと危惧された。

医師と患者の関係を見直す良い機会になった。

Vol.38 アトピー性皮膚炎はステロイド軟膏を塗ってコントロールしていると自然に治ってしまう簡単な病気か(2001.02)

アトピー性皮膚炎はステロイド軟膏を塗って症状をコントロールしていると、自然に治ってしまう簡単な病気であったが、マスコミなどによるステロイドバッシングにより複雑な治りにくい、治るのは奇跡のような疾患にしてしまった。

その一因は脱ステロイドを提唱した筆者にもあるかのような議論があります。

ステロイド軟膏を短期間使用し症状の改善がみられ、その後良くなってしまったり、年に数回しか使用しなくても症状がコントロールされている患者さんがいることは間違いありません。 

この治療法はどこでも、誰でも、誰に対してでも行える治療法ですから、いまでも例数は多いかも知れません。

しかし、ステロイド軟膏が余りにも効果があり、たちどころに症状を改善してしまうために、スキンケアや、食事、睡眠などの治療を行わなかった。 

治るためにどうするかというより、塗ればよくなるから、医者の側からいえば薬を出すだけ、患者さんの側からはいかにしてステロイド軟膏を手に入れるかだけになってしまった。

その結果ステロイド軟膏が効かなくなったり、副作用が出てしまったり、休むと外出できなくなるため止めれない患者さんが出てきた。

そういう患者さんでも最初はよく効いていた、ときどき使用するだけだったと言います。

こういう患者さんでステロイドの使用を中止してアトピー性皮膚炎が良くなることを確認して脱ステロイド療法として学会に発表した。 

ステロイドを全例に中止するというのではなく、ステロイドが効かなくなった・副作用が出ている例である。

ステロイドを止めた人の話によるとステロイドが恐いという情報に恐くなりステロイドを止めて悪化した人もいますが、多くの人は塗っていても違和感がある、効きが悪くなったなど、みずからの経験でおかしいと感じて塗るのを止めています。

いまでも何となく不安というふうに情報にふりまわされている人もいますが、最近では減ってきました。

免疫学の進歩でステロイドはIgEの産生やリンパ球のTh2(アトピー性皮膚炎や膠原病をおこしやすいリンパ球)化を起こすことが明らかにされ、その長期使用は慢性化・遷延化をきたす一因の可能性が明らかになりつつあります。

ステロイド軟膏は皮膚科専門医の指導どうりに使えば安全であると
言えなくなってきています。

一方ステロイドだけが問題かというと、5年間なんともなかった人がアトピー性皮膚炎を再燃したり、結婚して初めてアトピーが出たり、部長になりアトピーになったりという例が続いていますから、人間関係や業績、仕事などのストレスが影響していることが考えら
れます。
(しかしこういうストレスは何時の時代にもあるストレスで今にはじまったことではない。)

精神科医の石田一宏氏は現代の最大のストレスは「時間」であると指摘しています。

確かに「時間」を座標軸においてストレスを考えてみると、現代人のゆとりの無さ、時間労働などによる過労、それを回復する充分な睡眠時間の欠如などが心身に影響を与えているといえます。

このようにアトピー性皮膚炎の複雑化はステロイド問題だけでなく時間に追われ、ストレス社会といわれる時代を背景にしたものといえ、簡単でない例が増えていることは間違いありません。

Vol.39 心霊治療や気功が本当に効くか? (2001.4)

無痛手術でお腹の中の悪いものをつかみ出したら病気が良くなったというテレビを見たことがあります。 
つまみ出したものは動物の血にまみれたものだったと思います。

アトピーの患者さんはさすがにこのような治療を受けようと思わないでしょうが気功となると受けてみようと考える方がいるようです。 

週刊誌の見出しに気功で癌が治ったという特集を見つけました。
気功を検討したいと思います。

97年に出版した、治療体験集に手かざしが効くか、と書きました。
読者から手かざしで貝割れ大根の苦味を消すことが出来る、先生に食べさせてあげると反論の手紙を貰いました。 

この問題は気という超能力があるかどうかの問題とも重なります。

テレビでも有名になった物理学者の早稲田大学の大槻教授は「超能力ははたしてあるか」講談社 BLUE BACKSの中で超能力者などの人間が起こす誘導型超常現象をスプーン曲げや念写などのエネルギー励起型と心霊治療や、気功などの仮想エネルギー励起型に分類しています。 

そして彼はエネルギー励起型を検証して批判していきますが、仮想エネルギー励起型の存在は認めています。 

しかしこれは術者からの情報に対する受けて側の反応、つまり一種の「暗示効果」であるといっています。

小生もそのとおりと思います。念写が出来るのであれば書かれたものはエンピツやインクで書く必要はありません。
紙に書かれたものであれば何で書いたか科学的に証明できるはずです。

ボールペンで書かれたものならお笑いですがテレビではそこまで分析しません。

エネルギー励起型は手品やトリック探しとして楽しむもので超常現象ではありません。

気功はどうでしょうか。 
「気」というパワーが本当にエネルギーを持つものであれば、テレビで見たように人間を吹っ飛ばすようなパワーがあるのであれば、軽いエンピツを浮きあがらす事などは朝飯前のはずです。 

術者と受けてが人間である場合だけ反応するのは大槻教授のいう暗示効果でしかありません。 
大槻教授自身が書かれていますが教授のように「気道」が通っていない人には効果が無いようです。

大根の苦味を消すのも人が食べるから消えているように感じるだけです。
大根の苦味成分が科学的に変化したかどうか成分分析できるはずです。

小生に食べさせるのではなくそういうデータを出せばよいはずです。
しかし、そういう検証の仕方はしません。

心霊治療というとうさん臭く思う方でも、気功というと何か新しい治療法と思う方が多いようですが、同じ事でしょう。 
人と人とが交わり安らぎが生まれれば暗示効果が強くなります。

気功では人と人との間には「気」しか置きませんが、医療では薬を使います。

自信満々の医師にかかるとビタミン剤でも、乳糖でもすばらしい効果をあげることがあります。

それをプラセボー効果といいます。 医者の中にもビタミン剤や乳糖はプラセボー効果ではなく本当に効果があると思っている人もいるようです。 

このプラセボー効果は医者のカリスマ性が高いほど効果が出ます。淀キリではカリスマ性を削ぎ落としプラセボー効果の少なくなるように治療を行っているつもりです。

暗示効果であろうがプラセボー効果であろうが良くなればそれで良いやと思われる方もいると思います。 

しかし、長い目で見ると暗示やプラセボー効果に頼っている治療は暗示をかける術者がいなくなったり、暗示が効かなくなった時に良くないからです。

患者さん自身に自信をつけてもらって自然に良くなるということを目指したいからです。

Vol.40 第100回日本皮膚科学会に参加して (2001.6)

日本皮膚科学会が東京でありました。 

21世紀に向けた新しい治療の展望を見据えたシンポジウムやセミナーが多かった。 

アトピー性皮膚炎については相変わらずの状況ですが、それでも少し異なった様相を見せているように感じました。

21世紀夢の治療というシンポジウムでは長崎大学の片山教授がアトピー性皮膚炎について述べられました。 
IgEを肥満細胞に着けなくし、作用を起さないように、抗IgEレセプター抗体の使用やIgEそのものをつくらさないような遺伝子治療などが語られました。

前者は海外で既に喘息で治験が開始され有用性が期待されています。

元々片山教授はステロイドに対しては安全性に疑問を感じている先生ですから、ステロイドをどう使っていくかという話はされませんでした。 

その前に膠原病治療の展望を語られた和歌山の古川教授の副タイトルは

−脱ステロイド時代に備えて−

というものでステロイドに頼らない、病因にそくしたような免疫抑制剤や血漿交換療法、遺伝子治療を使った抗体の作成などが語られました。

セミナーではステロイド外用剤におけるタキフィラキシス

−アトピー性皮膚炎と乾癬との比較−

というテーマで旭川医大の飯塚教授が話されました。 
タキフィラシスとはある特定の薬剤の使用中にその反応性が急速に低下する状態のことをいいます。 

このテーマで日本皮膚科学会総会で話されるのは始めてではないかと思います。

この問題は99年1月にアトピー性皮膚炎治療研究会でステロイド軟膏の副作用を講演した際にステロイド抵抗性アトピー性皮膚炎の症例を報告し、ステロイドの効果が長期間の使用で減弱することを患者アンケートで示しました。 

しかしそんな例はステロイドをきちんと使わないから、抵抗性などない、これから調査しましょうというような反応でした。

その後今年の2月に東京支部学術大会でステロイドとタキフィラキシス・リバウンドというシンポジウムが行われました。 

聞くところによるとステロイドによるリバウンドはない、タキフィラキシスもないというようなうやむやな結果になったようです。

さて、今回の飯塚教授は乾癬の専門家です。 
乾癬の専門家の中ではステロイドにタキフィラキシスがあることは周知の事実ということでした。 

それはステロイドの血管収縮作用から見た場合2週間までの非常に良く効く効果の時期と、その後 8週間までのその状態を維持している時期では明らかに差があるということでした。

タキフィラキシスは血管収縮効果を乾癬では効果として評価することが出来るが、アトピーでは副作用誘発の観点から評価される事が多いからと発言された。 

このときは歯切れが悪く良く理解できなかった。 
アトピーでも血管収縮という面からのタキフィラキシスはあるとはっきりおっしゃられましたが、抗炎症作用とは相関するものでないため治療効果としての結論は出ていないと述べられた。

実際の臨床の場ではタキフィラキシスの定義にある急速にあてはまらないで、「長期連用中に効かなくなってくる例」や、「ステロイドの使用量が増える例がいる」がそのことをどう考えるかという質問をしましたが、「知らない」ということでした。

ステロイド抵抗性という意味では不十分ですが、ともあれこういう内容が総会で話されるようになったのは、今回の学会が慶応大学の主催によるためばかりでもないように思いました。

Vol.41 チーズ・バター論争 (2001.8)

チーズ・バター論争が起こっています。 
先に出版されベストセラーになっている『チーズはどこへ消えた?』(扶桑社)が『バターはどこへ溶けた?』(道出版)を訴えたというものです。

二冊とも生き方の問題を寓話風に単純化して書かれているもので普段は買わない部類の本ですが、話題になっていることもあり購入しました。 

書店には3弾目と思える『チーズはここにあった』という本までありました。 

1週間して同じ書店に行ってみますと良く売れているのかチーズは一冊もなく、バターがベストセラーの4位になっていました。

読みやすい内容で、一時間ほどで読み終えることが出来ました。 

迷路でねずみと小人がチーズを捜すものがたりです。 

「一度見つけた大量のチーズが無くなってしまい、新たにチーズを捜しに行くかどうか。状況の変化をどう捉え、どのように行動するか、そのために現在の状況をどうとらえているか。じっとしているよりも、というよりじっとしていては何も解決がつかない、状況の変化に応じて変わらなければ取り残される。」

ともかく前を向いて走れという内容でした。

一方バターのほうはまるで逆です。 
ネコと、キツネがバターを捜しに行く話にしていますが、設定は同じです。 

「走りつづけるのがかっこいいのか、正しいのか。向上や、前進のためにどれだけ大切なものをなくしたか! 気持ちの持ち様でどうとでも変わるのだ、現在の状況をこころから楽しめ。状況の変化にうろたえず、自分らしくあれ」
という内容です。

どちらが正しい生き方であるということは出来ません。 
どちらも必要な考え方と思います。

あるときはチーズのように、あるときはバターのように柔軟な考えがより良い生き方なのではと思います。 

大部分の設定は同じですが、バターのほうはネコとキツネ以外にニンゲンが出てきます。 

最後はなにか大きな力が助けてくれると諭されているようで、この点は納得できませんでした。

Vol.42 ステロイド軟膏を使わないということ (2001.10)

アトピー性皮膚炎の治療にステロイドを使用しない〜出来るだけ使用しない皮膚科医のメーリングリストがあります。 

会員の一人がデジカメで写した写真をメールに載せてどうしたら良いでしょうと相談してきます。 

もちろん皮膚科医ですから、カポジーや溶連菌感染などは自分の所で対応できますから、治りにくい困っている症例が中心です。 

漢方薬が良い、鍼が良い、レーザーや注射が良いなど沢山の治療法が紹介されます。 

さすがにオーリングテストが良いとか気功が良いとかは言いませんが、漢方などは本当に効くように思っているようです。 

嫌になります。 

ステロイドを使わないということはステロイド(とプロトピック軟膏)以外に効く薬がない状況では自然治癒を期待するしかないわけです。

医者がすべきことは自然治癒を促進するような情報を提供して、原因に気づいてもらったり、セルフケアしてもらうことです。 
医者の匙加減で良くなるわけではありません。 

淀キリにいけばステロイドに替わる良い薬があって、ステロイドを止められると思っている患者さんはまだいます。 

また、ステロイドを止めるためには何か特別なことをしなければならないと考えている人は多いです。 

だから、医者の中にも、ステロイド以外の代替医療を求めている人がいても仕方がないといえますが、現実に現在の医学・医療をきちんと評価すればそんなものは無いということがわかるはずです。 

ステロイド以外は一切効果がないといっているわけでもありません。 
亜鉛化軟膏、グリテール軟膏、非ステロイド軟膏など少しは炎症を抑える効果はあります。 

しかし、ステロイドと比べた場合は月とすっぽん、プロ野球とリトルリーグが試合をするようなものです。 
抗ヒスタミン剤や抗アレルギー剤は猫の毛で痒くなるとか、埃っぽいと痒くなるとか、蕁麻疹には良く効きますが、布団に入って痒くなるなどアトピー本来のかゆみには無効です。 

ジュクジュクしている場合には塩水やアトピー膏などは少し効果がある場合もあります。

しかし、ステロイドのような効果は期待できません。 

どこでも、誰にでも出来るわけではありませんが紫外線治療は一定の効果があります。

これは1970年代後半から報告されています。 

しかし、ステロイドの効果とは比べようがありません。 
しかも、20人に一人位は紫外線で悪くなる方もいます。 

シジュウムやウーロン茶でアトピーが良くなるようにいう人もいます。 
これらはお茶ですから、お茶を飲むときには一服すると言います。
ホット一息ついて楽になります。 

こういう作用は紅茶でも、日本茶でも、コーヒーでもあります。 ホット一息つくことは良いことですが、それでアトピーが治るというとうそになります。

誇大表現になります。 
医食同源といういい方があります。 
食材に含まれる成分が皮膚症状に影響を与えることは良く知られるようになってきました。 

そういう意味では漢方薬も何らかの薬理効果がありますから、絶対効かないといっているわけではありません。 

ステロイドの替わりになるほどの効果は無いということです。

このようにアトピー性皮膚炎の皮膚症状についてはステロイド以外は極わずかな効果しか期待できない。 

ではどうしてアトピーを治すか。 

患者さんの側からいえば早寝早起き、バランス良く食べる。 
気分転換を行いストレスをためない。
言いたいことをきちんと伝え、心配事は誰かに相談する、相談できる相手をたくさん作る。

医者の側から言えば皮膚症状に応じた適切な助言を行い、必要なら軟膏を処方する。

カポジーや溶連菌の感染なら、効果のある薬剤がありますから、処方する。

睡眠薬などは効く場合が多いですから、眠れない人には使用します。

きちんとした現在の医学が到達している現状と限界を正しく提供する。

安心感を与える場の提供をする。

これらのことが上手くいったときにアトピーは良くなってくると思います。 
特別な治療薬などありません。

メーリングリストの会員の中からも、注射が良かった、漢方薬が良かったというだけでなく、励まして、安心感が出来てくると良くなってくるという意見も出てくるようになりました。

Vol.43 アトピー性皮膚炎に『ステロイドなしに治療方法なない』か? (2001.12)

ある患者さんは、民間療法で治療に取り組まれていました。

悪化したときに○○医大を受診され、ステロイドを使用しない治療を希望したのですが、

「ステロイドなしに治療方法はない」と告げられ、がっくりしてステロイドを使用しないで入院治療を行っている地元から遠い私の知り合いの勤めている病院に入院されたようです。

大学の先生が言った

「ステロイドなしに治療方法はない」

ということを検証してみたいと思います。

「ステロイドなしに治療方法はない」ということはありません。 現実に入院してステロイド無しで治療を受けているわけです。 

それはその先生がステロイドで病気を抑えこむのが治療と思い込んでいる、または、大学病院全体がそれが治療だと思っているかです。 

ではこう言っていたらどうでしょう。 

「アトピー性皮膚炎の症状をただちに抑える事が出来るのはステロイド軟膏(プロトピック軟膏だけである。」 

これはこれで正しいと思います。 

このわかりきったことを確認したいのはステロイドを使わない医者も、患者もステロイド以外に効果のある薬があると思っているふしがあるからです。 

鍼が効くといってもステロイドとは雲泥の差があります。 
それを捜してあちこち医療機関を転々とするのは「青い鳥症候群」としてあとっぷに書いたとうりです。 

ステロイドを止めるために何かをせねばならないと強迫的に考えているようです。 

カウンセリングなどといわなくても話を聞いてもらうだけ、入院して他のアトピー患者に出会って自分の長所・短所に気づき良くなってしまう人がいます。

パッと診るだけで話も聞いてくれない患者の多い皮膚科より、ゆっくり話を聞いてくれるから、高いサプリメントを売りつけられても良くなってしまうこともある民間療法も健在です。

サプリメントが効いてるわけではありません。 

保険制度に問題があり実行しにくいという側面もありますが、医者がすればいいことをしないからです。

偽医者が新聞を賑わす事が少なくなりましたが、昭和40年から50年にかけてでしょうかよく記事になった記憶があります。 

医師免を持っている医師は威張っていて気安く話をしてくれない。
偽医者はゆっくり話を聞いてくれるからよく流行っていたという記事がありました。 

同じようなことと思います。 

効果のあるのはステロイド軟膏だけ、だけどそれを使わなくてもアトピーは良くなる。

薬として何も使わなくても良くなるときは良くなる。 
本当にビックリするくらい早くに綺麗になることもあります。 

問題はこのこと、

「何も使わなくてどうして良くなるか、どうすれば良くなるか」

をどうやって患者さんに伝え、納得して、実践してもらえるかではないでしょうか。

効く薬を追求しすぎると結局ステロイドやプロトピックになってしまいます。

上手く伝わらないと、病気は医者に治してもらうものと思っている患者さんにとっては、淀キリに行っても何もしてくれないということになります。 

上手く伝えることが出来ない医者は、漢方を使ったり、注射を使ったりするわけです。 

漢方薬や鍼が効くと思ってもかまわないではないかといわれるかもしれません。 

アトピー性皮膚炎は依存しやすい人が多いです。 
漢方薬や鍼に依存してもたかがしれていますから問題ないかもしれません。

私は漢方薬や鍼に依存して治るよりも、自分の努力で生活習慣を変え、性格を変える努力をし、考え方を変えて治っていくほうが良いと思っています。

医者の力は情報をきちんと伝えるだけ、感染症などはきちんと診断して治療する、が必要です。

Vol.44 地獄をみた (2002.2)

爽やかな風が僕の頬をうった。 
長い眠りから醒めた後のけだるさがあった。

あたりに白い花が咲き乱れ、なんとも心地好い香りが一面に漂っている。

その向こうには赤い実をつけた潅木が雑然と生い茂り、目の前には
そそり立つ絶壁がみえる。 

水の流れるゴーゴーという音が足下より聞こえてくる以外に何の音も聞こえない。 

僕は熊笹の中に身体を横たえていた。 
人一人いない自然の中に一人身を沈めて、スモッグの都会から開放された開放感で一杯になっていた。  

この世にこんな静かできれいな所があったのだろうかと。

突然僕はどうしてここへ来たのだろう、と不思議になってきた。

すると僕は何をしているのだろう?
何でこんなところに横たわっているのだろう?

次々と疑問が湧き出て来た。 
改めて周囲を見渡した。 

今度は景色ははっきりしなかった。

服をみると血がベットリとついている。 
何の血だろうか? 

今は確か夏だったはずだがそれにしてはなんという涼しさだろうか。 

しばらくすると、また心地好い眠気が僕を襲い、思考の中断があった。

しばらく眠ったのだろうか。 今度は割合はっきりした思考能力が蘇ってきた。

僕は先輩たちと山へ来ていたはずだ。 
だとしたら何でこんなところで寝ているんだ。

血!

そしたらこの血は僕のものか。 
頭に手をやった。 
ヌルリとした血糊がベットリついた。

アッ!
やっぱり僕の血だ。 
しかし痛みを全然感じないのは夢だからだろうか。 

いや夢じゃない、夢にしては生々しすぎる。 
そしたら現実の出来事だろうか。 

現実だとしたら、僕は遭難したことになるのだが。 

そうだ確か先輩が『大丈夫か、何かにつかまれ』と大声を上げたのを聞いたような気がする。 

やはり僕は遭難したのだろう。 
皆どうしているだろうかなァ、心配しているだろうなァ。

早く戻って生きていることを知らせなければ、そう考えて起き上がろうとするが、手足に力が入らない。 

そういえば右眼が開かないなァ、顔もだいぶケガをしているだろう。 
左眼だけじゃはっきり見えないや、もう少し休もう。 

彼女はとても悲しむだろうな。 
父や母も、山岳部の先輩に何とお詫びしようかなーーーなどの考えが次々と浮かんでは消えた。

遭難してからどれくらい経つのだろう。 
血は完全に固まっていないのでそれ程たっていないのだろう。 

さァもう一度起き上がってみよう。 
立ち上がろうとした時に『オーイ』『玉置ー』という声が聞こえた。 

アッ先輩が来てくれた。 
もう大丈夫だ。 
僕も『オーイ』と答えたが、自分の声が頭に響いてワーンとしか聞こえない。 

しばらくして白く動く人影が視覚に入った。 

『大丈夫か』
『大丈夫です』
『どうも心配かけました』と短い会話をかわし
『おぶされるか』と言われたので、
先輩の背におぶさって、ある程度平坦な所へ救出された。

先輩は木の枝の空間に寝袋を敷き、僕の寝床をつくってくれ、僕を寝かしてくれた。

安心感からか僕は又深い眠りに落ちた。 
次に醒めた時は夕闇の帷が山々をスッポリつつみこんでしまう直前のわずかな光に、ぼんやりと周囲の景色が見られる夕暮だった。

頭の傷が少し痛みだした。 
次第に空腹感と喉の渇きを感じ、食べ物か水をくださいと言ったが
口を湿らす程度の水しかくれずに、それしかないということだったが、さっき休んだ谷川がすぐ近くにあるのにおかしいなァと不満を感じたりした。 

そのうちに闇が完全に辺り一面を支配し、はるか彼方より聞こえる水音しか聞こえなくなった。 

先輩達も眠ってしまったようだ。 すると、このまま死んでしまうんじゃないかという非常な不安と、真黒い得体の知れない怪物が僕を飲み込んでしまいそうな恐怖で一杯になった。

眼を開けると誰か、又は何かが上から僕を覗いているんじゃないかという気になり、寝袋のチャックを上まで閉め、芋虫のように下の方で丸くなり早く朝が来てほしいと念じていた。

カチカチと正確に時を刻む腕時計の音だけが確実に時の経過をおしえてくれ、ある程度の安堵を与えてくれた。 

本当に長く不安で、つらい夜だった。 
完全に一人だったら、ほとんどの音を吸収してしまう山の夜の中で遭難者が常にそうする様に、暗闇の中を動き出し、最後の絶壁に足をとられ黒部渓谷に僕の一生を終えていたであろう。

それ位、山の夜は全ての物を飲み尽くし、人間一人の命など簡単に押しつぶしてしまうほど恐ろしくも雄大であった。 

そうこうするうちに長い夜が明け、明るい朝がやってくると安心してやっとうとうとと眠りについた。

そういう身も心も不安定な状態で2日間過ごした。 
出血は止まっていたが、頭の傷のほうでは蛆虫がはい回り始め、痒みを感じだした。 

2日目になると大分意識も正常になり、物を考えられるようになったが、夜の恐怖は同じで、遅くまで先輩を眠らさずに無意味な事をしゃべっていた。

食事も2日目になるとチョコレートを食べさせてもらったが、下顎が切れて口の内が砂で一杯だったので非常に味気ないものだった。

3日目に救助隊などの手によって富山県立病院へ収容された。

救出後に聞いた話だが、150メートルの絶壁を100メートル余り滑り落ち、最後の急斜面の始まるやや平坦な所にかろうじて引っ掛かっていたらしい。 

仮に救出された所も割合急斜面で、先輩達も身の安全を確保するのに苦労したらしい。 

水は40メートルのザイルに飯盒をつるして下の渓谷より汲んでいたということであった。 先輩達も乾パンをかじり蚊になやまされて、ほとんど眠っていないということであった。 

この先輩達の適切な処置、励ましがなかったら無事に救出されたかどうかわからない。

この遭難より6年が経過した。 
記憶もほとんど薄れ、当時の気持ち・情景を紙上に再現することは
非常に困難であった。 

しかしこの事件が私に与えた精神的ショックは非常に大きく、私の青春時代における最大の出来事であった。 
それは私に2〜3ヶ月間の精神的空白を与えそれを乗り越えるのに半年以上の月日がかかった。

それが私にとって良い事であったか、悪い事であったかを決定するのはもう少し時間が必要であろう。

ともあれ、この事件が現在の私の思想形成のうえに大きな比重をしめている事は事実であり、一度文章にしてみたいと思っていたことでもあるので、医局誌の内容としては不適当であるかもしれない
と思いますが、書かせてもらいました。

最後に当時お世話になった山岳部の先輩諸氏、救助隊、神緑会、その他たくさんの皆様に深くお礼申し上げます。

以上は昭和48年に発行された神戸大学皮膚科学教室医局誌に掲載してもらった文です。

Vol.45 言いたいことは自分の言葉でいいましょう (2002.4)

村上龍の『最後の家族』は引きこもりをテーマにしながらも、『共生虫』に見られた、攻撃性は無くなり、自立するという点で『希望の国のエクソダス』の荒唐無稽な面白さを越えているように思った。

引きこもりの長男のためにカウンセリングを受けるうちに母親が自分の考えを言えるようになり、変わっていく過程が面白い。

雫井脩介『虚貌』も面白かった。 
その中に、主題とは余り関係ないように思ったが青痣のある刑事がカウンセリングを受ける場面が出てくる。

『刑事は何時間か話し続け疲れた頃には、錆びついた鎧を脱ぎ捨てたように、気分が楽になる。』 

このようにカウンセリングが犯罪小説というジャンルにも登場する
ほど珍しくなくなってきているといえる。

引きこもりやカウンセリングが小説の話題になり、テーマになる時代とはどういう時代なのでしょう。 

それを身近に感じる人が増えてきたということでしょうか。

当院の愛すべき元気な女医さん瀧野敏子先生の『社長のための健康サバイバルマニュアル』の一節「自分で決められない人たち」の中で、誤解を恐れずに言えばと断りながら「お任せ医療を選ぶ背景」には「とくに戦後の日本人の特性として、自分の責任で何かを決定して、それに対して振りかかってきた結果を、全部自分で胸を張って受けとめるという人が必ずしも多くないから」というふうに書かれている。

最近そう言えば、言い方は違うが同じようなことを読んだなと思いめぐらすと先の2つの本に気がついた。

余り読まない分野の本を頂いたので読んでみた。 

松尾心空著『歩行禅』春秋社 

怒りを感じるときに昔の人は「はらわたが煮え繰り返る」と『腹で』怒った。 
そして頭に血が上ってきた。 

団塊の世代あたりは、頭にくると『頭に血が上って』怒った。 
腹で耐える時間が少ないがまだ腹の中の時間が長い。

『むかつく』のは体の中に入ってこずに、反射的、瞬間的にキレル。

しっかり腹で耐えてそして判断することが必要と説いています。

腹の探り合いとか腹黒い人とか良い意味に使われないこともありますが、じっくり腹を割って語り、考え言葉にしましょうということでしょうか。

大東文化大学の村山士郎教授は子供達の『あれ』や『学力低下』の背景に子供の人間的諸力の激変現象が進行しているとみています。 
それを食い止めるには言葉の獲得が大事であると力説されています。

他者とのコミュニケーション能力、事柄・対象の認識力や思考力、そして認識や思考を意味化・個性化すること、さらには感情つかさどること等も言葉によってなされる、としています。

確かに映像文化華盛りでテレビやテレビゲームで流される言葉は一方通行です。 

家庭内では少子化とあいまって、しゃべらなくても「あれ」「それ」「おちゃ」等の代名詞や単語ですんでしまいます。 
言葉にしなくても身内であれば態度で感じてくれます。

教授のいう
「豊かな体験に裏打ちされた、実感のこもった言葉の獲得」
は困難になっています。 

しかし、それを追求することと
「言葉で心地好く感動・共感できる機会を出来るだけ増やす」
「日記をつづったり、事実に基づいて文を丁寧に書いていくことを丁寧に指導していく」
事が必要であると結んでいます。

Vol.46 母親のストレスと、子育て (2002.6)

妊娠中の母親のストレスや生まれてすぐの育児の仕方が子供にどのような影響を及ぼすか、マウスの実験ですが少しずつわかってきているようです。

山元大輔著「恋愛遺伝子」光文社によると母親のストレスが子供の脳の性をあやふやにするそうです。

 

また、育て方が性格に影響するようです。 
出来るだけ原文のまま引用します。

ラット(ねずみ)をアクリル性のチューブに押し込んで身動きできないようにして、明るい光で照らしたり、温度を38度まで上げるなどのストレスをかけます。

妊娠14日〜21日頃(21日で出産)、母ラットにこのストレスをかけると生まれた雄ラットは成長後、雄とあまり交尾をしなくなる。 セックスレス化したのである。

しかも他の雄から載りかかられると雌のように背中をそらせる行動を盛んにとることがわかった。 

母親にストレスをかけず、新生児の雄ラットに直接ストレスを与えつづけた場合は成長してからの性行動に変化は見られなかった。

つまり、胎児期が鍵なのだ。 
妊娠中の母親にストレスがかかると、胎児の睾丸からでる男性ホルモンの量が減り、脳、特に性的二型核を充分雄化出来なくなる。 

その結果性行動も弱まると考えられる。

ネズミを使ったこんな実験がある。 
まず母ネズミの育児の仕方を詳しく観察して、2つのグループに分ける。 

第一のグループは、授乳のときに背中を丸め子供達を自分の下に寄せ集めるほか、繰り返し繰り返し子供を舐め(リッキング)、毛づくろい(グルーミング)をしてやる母ネズミたち。

もうひとつのグループはドテッと体を伸ばして授乳し、リッキングやグルーミングもおざなりな母ネズミたち。

同時に生まれたネズミの兄弟たちをこの2グループの母親に里子に出して育てさせた。

どちらの母親に育てられても、子供たちはちゃんと成長した。 

「親は無くても子は育つ」ように見えるのだが、実はこの2群のネズミたちには、大きな「性格」の違いがあった。

「まめな母親」に育てられたネズミたちに比べて「ずぼらな母親」の子は明らかに気性が荒く攻撃的なのである。 

ちょっとした刺激が大きなストレスとして受けとめられ、凶暴になる。

そこでどのくらいストレスに弱いかを、2群のラットで比較した。 
ストレスがかかると、その原因を作っている相手をやっつける(闘争)、またはその状況から逃げる(逃走)ことができるように、副
腎からホルモンが分泌され、エネルギーの供給が高まる。 

これは自動的な反応だから、ホルモン(グルココルチコイド)出具合を測ればどのくらいストレスを感じているか、客観的にわかる。

「まめな母親」に育てられたネズミたちでグルココルチコイドの出具合が少なく、「ずぼらな母親」の子に比べて、その量は2/3以下。 

しかも、しばらく経つと血液中のグルココルチコイドはスーと減っていった。 

やはり「ずぼらな母親」に育てられると、子供は成長した後もストレスに過剰反応を示すのだ。

「ずぼらな母親」に育てられたネズミたちは大量のグルココルチコイドに曝され続けるため、歳をとると脳の細胞、とくに海馬という場所の細胞がごっそりと死んでなくなるのである。 

おかげで記憶力が減退して「ボケネズミ」と化した。

さらに重大なことは、「ずぼらな母親」に育てられた雌ネズミは成長後自分が子育てする段になってやはり「ずぼら」になる、という点である。 

しかしそんな「ずぼら」な母の子であっても、「まめな母親」の元に里子に出されて育った雌は、自分の子を「まめに」面倒をみる。

この点では、氏より育ち遺伝子より環境の力が大きいと言える。 ストレスがかかってからしばらくするとグルココルチコイドの分泌が減るので、脳からの指令が副腎に伝わり、そこからの分泌を止めるからである。

どうやら体内のグルココルチコイドの量をチェックする仕組みに問題があるらしい。 

グルココルチコイドの濃度を測っているのは脳の海馬の神経細胞(グルココルチコイドの受容体タンパク質を持っている)で、この細胞がグルココルチコイドを受け取ると、脳のホルモン・コントロールセンターに通知して、ブレーキを踏むように指示する。 

海馬のグルココルチコイド受容体は、つまりホルモンの量を検出する「センサー」役で、それが多いほど感度が高まってブレーキの効きは良くなるはずだ。

実際「まめな母親」の子のほうが、「ずぼらな母親」の子よりもグルココルチコイド受容体をたくさん持っているのである。 

つまり、母親から受けるリッキングやグルーミングが子供にとって軽いストレスとして、言い換えれば、「良いストレス」として効くらしいのである。 

この「良いストレス」を受けると、海馬にストレス・センサーがたくさん作られる。 

こうしてストレスへの過剰反応を防止するブレーキの効き具合が、生後20日で決まってしまい、それは一生変わらないのである。

Vol.47 アトピー性皮膚炎が治るということ

脱ステロイド療法と銘打って治療をはじめて12年たちました。その間に年賀状や、新しい患者さんを紹介してくれたり、などの機会で治ってしまったと考えることが出来た元患者さんに現在の皮膚の状況やアトピーに対する考えをアンケートで聞いてみました。ほとんどの方は住所が変わっていたり、私の記憶がはっきりしないなどで65名の方しかリストアップできませんでした。それでもあて先不明で帰ってきたのが10通ありました。55名中アンケートの回答を寄せてくださった方が33名あります。
1:皮膚の状態 該当するところに丸をつけてください
     (いくつでも)

  皮膚のことを気にする必要は無い      7名

  何もつけない(女性の化粧は別)      13名

  スキンケアには注意している
  (非ステロイド軟膏、保湿剤)       15名

  しわや色素沈着などアトピーの
  名残があるところがある          17名

  季節の変わり目にステロイドを
  塗ることもある              7名

  時々痒くなる時、所がある         25名

 その他(自由に記載してください)

  痒みが出るのは体の弱るバロメーター

2:今注意していることは何でしょう(いくつでも)

  特別注意している事は無い         9名    
  食べ過ぎないようにしている        5名

  疲れたら早く寝るようにしている      12名  

  気分転換を大事にしている         16名

 その他(自由に記載してください)

  働き過ぎないようにする・規則正しい生活・
  和食中心の食事・適度な運動

  アトピーのことは忘れるようにしている

3:何故良くなったとお考えですか(いくつでも)

  ステロイドを止めたから          18名   

  生活リズムをかえたから          8名

  精神的なものが大きかった         19名   

  効果の有る民間療法に出会う        2名

 その他(自由に記載してください)

  自己を見つめなおす機会          3名
    食生活、生活パターンの変革・
    何事も深刻に考えない・完治す
    るという意思を持つ          4名
    家族の理解、協力           3名
    水と空気の良いところに移った
    ・プラス思考でくよくよしない

4:あなたにとってアトピー性皮膚炎は何でしたか
       (いくつでも)

  嫌なもの考えたくも無い          2名   
  人生勉強になった             19名

  いろんな人と知り合えて良かった      12名   
  二度と戻りたくない            14名

  あのリバウンドが耐えられたから何でも出来る  
                       12名

  ステロイド軟膏の副作用と考えている    8名

 その他

  アトピーである自分を受け入れる      2名
   まだまだ波がある・人生で起こるいろ
   んな経験のひとつ・ストレスが溜まる警告 3名
   上手に付き合っていく病気・健康に暮
   らしていくための通過点・本当の自分
   を探すたびのようなもの・[行雲・流水]
   なるようになる・生活、自分・家族の体
   のことを考えるようになった・生活習慣
   病、精神的な影響・自分の性格を見直す
   いい機会であった            2名
   アトピーがあったから今の自分がある・
   自分の人生にとってプラス・自己改革であった

まだまだ波のある方もいるようでアンケートをお送りした方でアンケートに回答されないで数年振りに悪くなっているのですと来院された方が2名いらっしゃいます。年賀状などを頂きながらアンケートには回答されなかった方もいます。考えるのも嫌と思った方もいるのではと思います。

アトピー性皮膚炎をステロイド軟膏の副作用と回答されてステロイドを塗ることもあると答えた方もいます。ステロイドを絶対悪とは決め付けていないようです。

自由記載欄にはいろいろ書いていただきました。ステロイドを使っていたときより綺麗、同世代の人と遜色が無いほど綺麗になったという方もいます。

またどこまできれいになるか、きれいになった人に会いたいなら、電話してくれたら力になりますと電話番号を添えてくれた人もいます。治り方もひとそれぞれですが治ってしまう人がいるということに自信を持ちましょう。

アトピーはステロイドを塗ってコントロールするしかない病気ではありません。

Vol.48 最近読んだ本から

現在の医学は「原因を突き詰めて原因を取り除けば、治る」という考えが主流です。慢性胃潰瘍がピロリ菌の除菌で軽快するとか、慢性の蕁麻疹もピロリの除菌で軽快したという報告があります。
しかし、アトピーの原因がダニアレルギーであればダニを減らし、シーツを変えれば、良くなるはずです。卵のアレルギーが原因であれば、食べなければ良くなるはずです。

アトピー性皮膚炎や、生活習慣病などは原因が多岐にわたったり、取り除けないものであったり、分からない場合も多く、原因の追求は限界があります。

原因捜しをしなくても治っていくといえるような本を読みましたから紹介しながら私の意見も述べたいと思います。
旭爪あかね著「稲の旋律」新日本出版社は大学を中退して他人と関わるのが苦手で引き篭り勝ちの女性と、中年独身の農村男性の交換文書という形で始まります。徐々に農作業を手伝うようになり、社会的な活動も出来るようになっていく過程を描いたフィクションです。

男性からの手紙に「稲や野菜を育てていて日々痛感させられるのは、理由や原因がわかったからといってそれを予防できるものとはかぎらない、ということです。僕たち百姓が何百人力を合わせても、台風を止めることは出来ません。

・・・・・・作物には、風除けシートや農薬によって生長の障害となるものから守ってやるだけでなく、稲や野菜そのもののなかに悪条件の下でも元気に丈夫に育っていくことのできる力を養ってやることが、実はとても重要です。」と書かれています。私は人間関係、ストレスがアトピー性皮膚炎を重症化していると考えています。

しかし、こういう人間関係や、ストレスは生きていく限りあるものです、なくすことは出来ません。だからこの男性の発言と同じく原因追求を止めて、生きていく力を削がないようにする、治る力を妨げないようにするという観点が必要と思います。

同じようなことを八幡洋著「立ち直るための心理療法」/ちくま新書で言っています。
トラウマ理論をぶっとばせという帯広告がついていました。トラウマ探しは不毛でしかない

解決志向セラピーと前向き思考を強調しています。

「薬がどれだけ減った、を目標にするのではなく何が出来るようになったかなどのプラスのことを治療の目標にする」といっています。ステロイドをどれだけ減らせたかを目標にするのではなく、仕事が充分に出来た、とか楽しく毎日を過ごしているということを目標にしようといっているとおもいます。結果としてステロイドの使用量は減るはずです。

 「稲の旋律」に戻ります。農作業を手伝うようになった主人公の女性が先輩の女性を連れていくようになり、農村男性と、先輩女性が急速に親しくなることに焼もちを妬いたのか元の状態に戻ってしまったようになりました。

男性からの手紙にこうあります。

 「百パーセント元通りになってしまった」とか「百パーセントかけがえの無い」とか、千華ちゃんは、百パーセントという言葉が好きみたいですね。そうそう「とことんまでやり抜く」というのもありました。僕がふだん、ほとんど使ったことのない単語ばかりです。僕の出る単語は「まあまあ」「ぼちぼち」「できるところまで」ですから。

同じことを【上山和樹著 「ひきこもり」だった僕から 講談社】でいっています。

僕たちはグレイゾーンを経験していない「両極端ではなくグレイゾーンを生きろ」と呼びかけています。

このことは引き篭もりの人ばかりではなく、アトピー性皮膚炎の人にもいえると思っています。

ぼちぼちやりましょう。

Vol.49 文芸書にあらわれたアトピー・引きこもり

脱ステロイドのことが一般の書籍に登場したのは推理小説ですが、島田荘司著の『アトポス』(1993年)だと思います。震災で散逸したため読み返すことが出来ず不正確ですが、死海近くのサナトリウムで養生する患者とハリウッドを結ぶ物語が組み込まれていました。

真っ赤な顔と脱毛と一種異様な状況が書かれていました。脱ステロイドを報告し、ぼちぼち世に知られるようになっていた頃です。海外でも報告は無い頃でした。

そのため筆者に手紙を出して脱ステロイドの海外文献があるか確かめようと思ったことがありますが、実行できずにそのままになっています。それ以降にアトピー性皮膚炎が一般書籍に登場したことは無いのではないかと思います。私が知らないだけかもしれません。知っていることがあれば、教えてください。

一方、1995年に精神科医の斎藤学がアダルトチルドレンを世に出してころから、心の問題や幼児期の育てられかたが取り上げられるようになり、トラウマという言葉も良く知られるようになりました。

文芸書のなかでは自身がパニック障害と鬱にかかっているといわれている南木佳士が医者と患者側からの視点で命の貴さを語り、老人問題や家族関係を中心に医者と作家の二束のわらじをはいています。

淡々とした語り口は好きな作家の一人です。『阿弥陀堂だより』が映画化されるそうです。自分の要求や、家族と個人の関係、他人の命をなんとも思わないなどの社会情勢を写し出すような作品は宮部みゆきの『火車、理由、模倣犯』などの一連の作を思い浮かべます。


不登校や引きこもりが話題になり、カウンセリングや心療内科などがテレビのテーマにもなり、推理小説や文芸作品のなかにもたくさん取り入れられるようになりました。

引きこもりそのものをテーマにした作品としては村上龍の『共生虫、最後の家族』や田口ランディの『コンセント』前号にも書いた旭爪あかね『稲の旋律』などたくさんの作品が発表されてきています。

成人アトピー性皮膚炎の増加も引きこもりも過敏性腸炎も同じ根っこのようなものがあるのではないかと考えています。
これだけ心の問題が取り上げられ、社会問題になろうとしているのは時代が皮膚科医の常識を超えて進み、効率を追求していた社会に待ったをかけているように思います。

アトピー性皮膚炎のダニやかび、食物などの原因探しや、ステロイド問題だけにとらわれていては道を誤ると思います。ましてやステロイドをどう使うかしかいわない日本皮膚科学会のリーダーたちの視点は間違っているとしか思えない。

Vol.50 アトピー性皮膚炎治療ガイドラインについて    

                               
 最近、当院の内科部長とアトピー性皮膚炎の治療について話しました。アトピー性皮膚炎の治療ガイドラインは厚生労働省版と日本皮膚科学会版があります。
彼は両方のガイドラインともステロイド軟膏を使って自然寛解(自然に良くなること)を待つというのが基本で、どうして自然寛解に持ち込むか、その方法論は書かれていないと指摘しました。

確かに皮膚科学会版では『アトピー性皮膚炎の炎症を速やかにかつ確実に鎮静させ、患者の苦痛を取り除ける薬剤で広く使用でき、その有効性と安全性が十分に評価されているものは現在のところステロイド外用剤の他にはなく、如何にそれを選択し、使用するかが治療の基本となる』とステロイドの有用性だけを強調しています。
患者の苦痛を取り除いた後、塗らなくても良くなるようにどうすべきか、は記載されていません。

厚生労働省版では悪化因子を見つけることが、強調されていますし、皮膚科学会版では精神面の関与や生活指導が書かれています。
生活指導としては
1)入浴、シャワーにより皮膚を清潔に保つ。
2)室内を清潔に保ち、適温・適湿の環境を作る。
3)規則正しい生活を送り、暴飲・暴食は避ける。
4)刺激の少ない衣服を着用する。
など細かい指導がなされることになっています。

このように単にステロイドをどう使うかだけではありませんが、どう自然寛解に持ち込むかという点では彼の言うように弱い様に思いました。

大多数のアトピー性皮膚炎では悪化因子を見つけ、生活指導を行なっている間に良くなってしまう例が多いと考えられます。しかし、こうしたとおり一遍の治療では良くならない人がいます。

ステロイドを塗って綺麗になれば悪化因子やスキンケアのことを忘れてしまい、無理を重ねてしまう人がいます。そしてステロイドを塗っても効かなくなる人がいます。
こういう人たちを自然寛解に持ち込むにどうすべきかというガイドラインではないということです。

私の治療方針はご存知のようにガイドラインに無い自然寛解に持ち込むためにどうすべきかを語る、または一緒に考えるという立場をとっています。

まだまだこうすれば確実に良くなるという標準治療はありません。患者さん一人一人置かれている状況は異なります。
しかし、基本は「早寝早起き」を目指し、「腹八分目に医者要らず」を実行する。言いたい事が言えて、バランス良い考えができるようになる。夢と希望を持ち、自分の生き方に自信をつけていく。「生き方上手」なんて大嫌い、泥臭くても良いではないでしょうか。
自分の気持ちに正直に自分のための人生を生きることがアトピーが消えていくことにつながっていくと思っています。
 
内科部長はアトピー性皮膚炎は生活習慣病、特に食生活が大事であると指摘していました。学会出張などで食生活が乱れると少し痒みが出るが、有機農法・無農薬の野菜をしっかり食べていると良くなってくると言っていました。



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